<J1:磐田4-0湘南>◇第8節◇ヤマハ

 磐田が湘南に圧勝し、今季8試合目にして初勝利を手にした。開始1分で、この日は本職であるボランチの位置に入ったMF山本康裕(23)を起点にMF山田大記(24)のゴールで先制。一気に波に乗ると、守備陣も今季リーグ戦で初完封。最下位を脱出した。長いトンネルを抜け、連勝街道への光が見えてきた。

 「こういう苦しい時だからこそ、僕たちサポーターが支えていきたいと思います!!」。試合開始直前、サポーター代表が拡声器で叫んだ声は、ロッカールームで円陣を組む選手の耳にしっかりと届いていた。開幕から、磐田はシュートが何度もゴールポストにはね返された。内容で圧倒するも勝ちきれない。クラブスタッフは試合前、両方のゴール裏に塩を盛った。サポーターとクラブ関係者の祈りが届いたのだろう。磐田の攻撃サッカーが爆発し、快勝で最下位を脱出した。

 今季初めてボランチを務めたMF山本康が攻撃のスイッチを入れ続けた。開始早々、右サイドへ駆け上がりクロスを上げる。MF松浦拓弥(24)がスルーして山田がシュート。バーに当たったが、この日は真下に落ちて、そのままゴール。前半29分には、松浦の個人技のドリブルで2点目。後半は、山本康のアシストからさらに2点を追加した。

 山本康は自陣でボールを奪うと、迷わず相手ゴールへと突き進む。得意の縦パスで好機も演出し、2アシストと躍動した。「ここに戻って来て、ここでダメだったら自分はないと思っていた。あらためて自分のボランチ像は見せられたけど、もっと守備で貢献できればよかったかな」。

 今年2月、幼いころから試合に足を運んでくれた父が死去。出遅れたこととチームが勝てない状況に、ツイッターで「悔しいね。自分がピッチに立てないこともチームが勝てないことも。なによりおやじが黙ってないね(笑い)」とつづった。この日は天国の父も、きっとほめているだろう。山本康は「そうだといいですね」と、ほほえんだ。

 勝てなくてもぶれずに続けた攻撃サッカーで、ようやく勝利を手にした。山田は「サポーターの呼びかけが耳に届いて、その言葉を胸に戦っていた。次につなげられるように頑張りたい」。次節のアウェーでの甲府戦へ、勢いをつける勝利になった。【岩田千代巳】