<J2:北九州1-2札幌>◇第13節◇6日◇本城

 ゴン背番号継承1号!

 J2札幌は北九州を下し、4月17日鳥取戦以来4試合ぶりの勝利を挙げた。前半14分に、元日本代表中山雅史氏(45)から今季9番を受け継いだFW横野純貴(23)が、初先発初ゴール。11年7月9日以来1年10カ月ぶりの得点で勝利への流れをつくった。今オフはブラジル留学に出るなどレベルアップ。13戦目にしてつかんだ先発チャンスで財前監督の期待に応えた。

 ついに9番が決めた。0-0の前半14分、MF宮沢の浮き球パスをゴール前で岡本が競ってこぼれたボールに、横野が反応した。「ヤス君(岡本)がうまく(頭でボールを)流してくれたのが良かった。練習はうそをつかないということ」。左足で丁寧にトラップすると、冷静に右足を振り抜き、ゴール左に流し込んだ。

 屈辱のときを耐え抜いた。今オフは荒野とともにブラジル留学。コンディション万全で熊本合宿入りした。初実戦となった2月7日の山口戦はファン投票で先発の座を勝ち取るも、何もできず無得点。その後は、開幕構想から外れ3、4月は1試合も出番はなかった。「9番を背負ったプレッシャーもあったけど、それは自分なりにうまく消化してきたから」。MF深井ら、6歳下のユースの後輩が出場する間も、ひたむきに練習だけの日々を送った。

 くじけそうな日もゴンの言葉が支えてくれた。1月27日のファン感謝イベントに中山氏がサプライズ出演。9番を授けられた横野は、控室で声をかけられた。「純貴、とにかく早く試合に出ないとな。お前らしくやればきっとうまくいく。頑張れよ」。シンプルなメッセージの中に、自分と同じにおいを醸し出す後輩への愛がこめられていた。

 同氏が10年に札幌入りして、最初に刺激を受けたと話したのが、この横野だった。「バカになれる男は強い。バカをやれるのはそれだけパワーがあるから。それをうまく生かせば、きっとすごい選手になる」。うまさはない。それでも全盛期の同氏のように、泥臭くゴールに向かう姿勢で、9番継承弾を決めた。

 おまけもついた。後半4分、右足首を捻挫して途中交代となった。今日7日に札幌市内の病院で精密検査を受ける。「自爆でした。本当に悔しい。でも軽いけが。早く戻ってまた点を取りたい」と前を向いた。

 ここはスタートライン。あこがれの先輩への報告は、まだしない。「1点じゃ恥ずかしくて。9点取ったら連絡します」。1月29日にタレントの辻田沙織(27)と結婚し、これが新婚1号にもなった。試練を越え一皮むけた新9番が、J最多157発、鉄人ゴンの背中を、がむしゃらに追い続ける。【永野高輔】