柿谷よ、J1で待ってろ!

 昇格残り1枠をかけたプレーオフ(PO)が、明日12月1日の準決勝で幕を開ける。四国勢初のJ1を狙うJ2・4位の徳島は、同5位の千葉と本拠地で対戦。29日は徳島・板野町で、実戦調整を行った。チームの屋台骨を担うMF浜田武(30)は、日本代表に定着したC大阪FW柿谷曜一朗(23)が徳島在籍時に私生活の面倒を見た間柄。浜田は「勝って昇格を決める」と意気込んだ。

 播磨灘を臨む高台にある練習場で、決戦に向けた闘志を高めていった。寒風が吹く中で、約2時間みっちりと実戦メニューをこなし、練習が終わっても引き揚げる選手はほとんどいない。MF浜田は黙々と居残りでシュート練習をこなしていく。真冬のように冷え込んだ徳島・板野町。選手らが醸し出す熱気は、すさまじかった。

 「みんな良い準備ができていると思う。勝って(昇格を)決められればいい」

 普段は寡黙な浜田でさえ、言葉は熱を帯びてくる。10年にC大阪から徳島移籍。その半年前には、同じC大阪からFW柿谷がチームに加わっていた。遅刻が多くC大阪を放り出された後輩と同じアパートに住み、毎朝たたき起こしては自分の車に乗せて練習場に連れて行った。練習が終わるとまた自分の車に乗せて、財布を持たない柿谷に食事をさせたという。そんな後輩は、日本代表に定着した。

 「曜一朗が(PO観戦に)来るとか言っていたんですけど(C大阪の)練習があるみたいで。たぶんアイツ、来ないでしょうね」

 そう言って浜田は苦笑いしたが、J1で対戦したい-。そんな思いが背中を押し続ける。

 まず準決勝で顔を合わせる千葉には今季1勝1敗。全くの五分だが、相手にはJ2得点王で今季22得点のFWケンペスら「個」の力がある。MF宮崎光平(32)は「向こうは攻撃陣にパワーがある。しのいで、自分たちのペースに持ち込みたい」。年間順位で上回っており、引き分けでも決勝に進めるため、DF橋内優也(26)は「とにかくゼロに抑えれば、うちは勝ち上がることができる。しっかり守ってスキは与えない」と闘志を燃やした。

 四国勢初のJ1へ。徳島が旋風を巻き起こす。【益子浩一】

 ◆徳島ヴォルティス

 1955年(昭30)に大塚製薬として創部。90年日本リーグ2部、92年1部昇格。05年Jリーグ入会、J2参加。チーム名はイタリア語で「渦」を意味するVORTICEから生まれた造語。ホームタウンは徳島市、鳴門市などを中心とする全県。クラブカラーは青。

 ◆J1昇格プレーオフ

 既にリーグ1位G大阪と2位神戸の自動昇格が決定。残り1枠を3~6位の4クラブが争い、3位京都と6位長崎、4位徳島と5位千葉が、リーグ上位クラブの本拠地で準決勝(12月1日)を戦う。勝者が国立で行われる決勝戦(同8日)に進み、残り1枠を決める。延長戦はなく、引き分けの場合は年間順位の上位クラブが勝者となる。