仙台MF太田吉彰(31)が、走りに「怖さ」を加える。宮崎・延岡キャンプ3日目の20日は、練習前に宿舎でW杯日本対ギリシャを観戦した。結果は退場者を出して引いて守る相手を崩す動きがなく0-0。ベガルタの「馬」と呼ばれる男は、求められる役割の重要性を再認識した。

 太田はピッチに立っている気持ちで日本代表の戦いを見届けた。ギリシャの強固な守備を揺さぶるような縦パスやドリブルはなく、攻め手を欠いて無得点。あらためて「走りの質」が勝負を分けると痛感した。

 太田

 難しい試合だったけど、強引にでも仕掛ける選手がいれば違ったかもしれない。(オランダFW)ロッベンみたいに、強いチームには仕掛ける選手が絶対いる。相手に脅威を与える走りが、自分にもチームにも必要だと感じた。

 日本はボールを支配しながら横パスが多く、攻撃はクロス一辺倒。スピードを生かした縦への推進力を武器とする立場としては、歯がゆい展開だったに違いない。だが、仙台も守備を固める相手に苦戦してきた。

 太田

 サッカーは支配率が高ければ勝ちじゃない。このキャンプで、手詰まりになった時の攻めを練習している。つなぐだけじゃなくて、どう崩すかが大事。

 意識の変化はすぐに表れた。攻撃練習では右サイドから中央に進入して味方を使い、再び裏のスペースを突く動きを繰り返した。ハーフコートでの9対9のミニゲームでも密集地帯を抜け出し、低く速いクロスで武藤の得点につなげた。

 太田

 自分は走ること専門ですから。ここで状態を上げて、みんなの助けになるよう走力で圧倒したい。

 チーム一の脚力の持ち主は、キャンプの厳しい体力強化メニューも「大歓迎ですね」と笑う。プロ13年目。31歳になった2児の父は、進化を続けていく。【鹿野雄太】