<J1:川崎F0-0東京>◇第24節◇20日◇等々力

 東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)は、自分を殺してパスを選んだ。後半35分。DF徳永の右クロスに反応した。逆サイドで待ち受けたが、シュートではなく中央にいたFWエドゥーへパス。「角度のない自分が打つよりも、フリーのエドゥーが打った方が確率は高いと思った」。しかし、左足ボレーシュートは枠をとらえきれず上に外れた。見届けた武藤は、腕を振り下ろして悔しがった。

 自身のゴールよりも、チームが勝つためのプレーを優先したが、勝ち越しゴールは生まれなかった。18日の練習で首を痛め、一時は出場も危ぶまれた。練習を途中で切り上げ、首をコルセットで固定して都内の病院へ直行。精密検査を受けた結果、大事には至らずに済んだ。しかし19日の前日練習では、テーピングで痛みをこらえて調整。この日は「問題なくやれた」と、終盤戦での上位戦線を占う2位川崎Fとの24回目の「多摩川クラシコ」のピッチに当然のように立った。

 満員の敵地で、異様な盛り上がりを見せるクラシコ。3月のホーム戦(0●4)では控えに回り、出場のなかった武藤にとって初めてだった。小学校時代から東京の下部組織で育った生え抜き選手として、フル出場したがスコアレスドロー。チームはこれで05年以来のクラブタイ記録である12戦連続負けなし。一方で4戦連続引き分けと勝ち切れない。「どこかで流れを変えないと。誰でもいい。流れを変えるためにゴールが欲しい。そのために力を出していきたい」。日本の新星が打開するしかない。【栗田成芳】