◆本田圭佑(30=ACミラン、FW)

 今季前半のACミラン本田は出場時間も少なく、その力を発揮するのに十分な機会は与えられなかった。その理由としてまず挙げられるのは、モンテラ監督が同じポジションでライバルのFWスソに寄せる厚い信頼だろう。

 今季のプレシーズン、本田は故障明けでコンディションが十分ではなかった。そこで新しくミランの指揮官に就任したモンテラ監督は、スソを3トップの右FWとして試合に出す。スソは昨シーズン冬にジェノアへレンタル移籍し、19試合に出場して6ゴールを挙げ、今季からミランに戻ったばかり。こうしてスソは練習試合で結果を出し監督に認められ、そのままリーグ15試合に出場、5ゴールを決めた。得点以外にも正確なクロス、ボールのキープ力、スルーパスなど見応えのある場面を多く作り上げ、チームが固まっていくにつれ、そのパフォーマンスは驚くほど向上し、サポーターの心をつかんでいった。

 そんなスソを休ませるために、モンテラ監督は第10節のジェノア戦で本田を先発で起用。しかし、本田は目立った結果を残せず、イタリアの新聞から酷評された。だがその後、モンテラ監督は本田を左でプレーさせることを思いつく。こうして15節のクロトーネ戦終盤、左サイドに本田を入れ、そのFKでFWラパドゥーラのゴールの起点となった。

 モンテラ監督が本田のことを考慮している例はほかにもある。12月23日に行われたイタリア。スーパー杯で前半40分、相手DFリヒトシュタイナーが左FWとしてプレーしていたMFボナベントゥーラの顔面に肘鉄を食らわせ、ボナベントゥーラが倒れこんだ。交代となる可能性が出た際、監督は本田にアップを命じたのだ。同監督は本田の近くにやってきて「お前だ」と指さした。その後、ボナベントゥーラが支障なくプレーを続けたため、ピッチに立つことはなかった。

 事実、モンテラ監督はこれまで何度も記者会見で、本田のプロフェッショナル精神を称賛してきた。このイタリア・スーパー杯後の会見でも「試合にあまり出ていない選手たちも含めてこの素晴らしいチームを作り上げている選手たちに満足している」と話している。

 ライバルであるはずのスソと本田の関係は決して悪いものではない。リーグ戦で交代によりベンチに戻ったスソと、ベンチに座っている本田が試合を見ながら意見を交わし合うこともよくある。またイタリア・スーパー杯優勝の直後に、本田が満面の笑みを浮かべて両手を大きく広げてスソをハグしていた。

 今季前半は結果を出せなかった本田だが、1月には移籍する可能性もある。しかし、それが実現しない場合、契約終了の6月までチームにとどまることになる。チャンスが与えられれば今度こそそれを生かしてチームに貢献したいところだ。【波平千種通信員】

◆長友佑都(30=インテルミラノ)

 長友のインテルミラノは、今季マンチーニ監督から代わったばかりのデブール監督は「DFは守備を完璧に」というのを求めていた監督だった。攻撃も得意で前に出て行きたい長友としては、持ち味を発揮する事が出来ず、出場できない辛い時期もあった。

 10月2日のローマ戦後に「自分を殺しても監督の言われる通りに」と、目を潤ませて話していたのが印象に残っている。その後、デブール監督から守備を学び、ミスも少なくなったところでピオリ監督に交代。今のところDFアンサルディとのポジション争いが厳しいが、12月21日のラツィオ戦では後半の途中出場にもかかわらず良いパフォーマンスが出来た。ピオリ監督は、長友がインテルミラノに入って7シーズンで9人目の監督。これまで監督交代にも最終的にはポジションを獲得していった長友に後半も期待したい。【西村明美通信員】