プレーオフ初黒星の中で意地は見せた。2-4の後半35分、中央で相手マークを振り切り、左サイドのMFサイエフへパス。折り返しを要求しながらゴール前に走り込んだ。リターンパスにダイレクトで左足を合わせ、対角のゴール右に蹴り込む。その瞬間、鬼の形相で「センターサークルに戻せ」と諦めなかったが、反撃は及ばなかった。

 敗れはしたが高評価だった。地元紙ヘット・ニウスブラットのシュミット記者は「彼は本物のフェノーメノ(怪物)。いつでもどこでも得点する選手の典型」と評価。地元メディアでは「宝物のようなゴールだった」と報じられた。1月の移籍後14試合9得点。ヤングボーイズに在籍した今季前半の公式戦25戦12発に続く、日本人初の2クラブでの2ケタ得点にも王手をかけた。ただ、久保は喜べない。「気分は悪いです。この試合を落としたのは痛い」と下を向いた。

 残り3試合で首位アンデルレヒトと勝ち点8差、2位クラブ・ブルージュとも4差に広がった。欧州CL出場の可能性があるのは2位まで。「気持ちが落ちたことは確かだけど、切り替えてモチベーションを上げていかないと」。逆転を信じて来週の3連戦に挑む。

 ◆同一シーズンに異なる2クラブで得点 J1に限ると過去に21人。そのうち年間合計20得点に到達した選手はおらず、年間合計10得点も過去に4人が達成したのみ。2チーム合計の最多得点は17点で、年間52試合制だった95年にFWトニーニョが清水で11点、浦和で6点。J2、J3を含めても、10年のFW大黒将志がJ2の横浜FCで12得点を記録した後に、J1の東京に移籍して7得点をマークした例が目立つくらい。同一シーズンにJリーグの2クラブで2ケタ得点に到達した例は過去にない。