<欧州CL:フェネルバチェ2-1チェルシー>◇2日(日本時間3日)◇準々決勝第1戦◇トルコ・イスタンブール

 ジーコ采配が金星をつかんだ!

 フェネルバチェがチェルシーを2-1で破り、初の4強入りに王手をかけた。ホームで先制されたが、ジーコ監督の大胆な起用策で後半から流れを一変。同9分に投入した国内リーグ無得点のFWカジムリチャーズが同点ゴールを奪うと、36分にFWデイビッドのロングシュートで逆転に成功した。日本代表時代には見られなかった積極采配でホーム5連勝。初孫誕生で勢いづくジーコ監督が欧州を席巻する。アーセナル対リバプールは、1-1のドローに終わった。

 後半早々、ジーコ監督が動いた。MFボラルに代え、21歳FWカジムリチャーズを投入。国内リーグ無得点の無名選手だが、持ち前の縦へ抜け出すプレーにかけた。その狙い通り、20分に同点弾が飛び出した。浅いDFラインを見透かしたように縦パスからゴールを決めた。チームも息を吹き返した。そして36分、デイビッドのゴールで逆転に成功。約5万人の大観衆で埋まったスタンドが、大きく揺れた。

 意気揚々のジーコ監督は「前半に我々を崩壊寸前まで追い込んだチェルシーが負けたなんて信じられないだろう。どんな状況にあっても、呼吸さえしていれば人間は生きていけるんだ」。歓喜の場面で2度、日本代表時代と同じくガッツポーズしながらジャンプした。以前と姿こそ変わらないが、2年目の欧州でその手腕は大きく変わった。

 日本代表時代は「海外組」にこだわり、選手の体調に関係なく固定メンバーを起用した。しかし、フェネルバチェでは絶対的な存在はつくらず、選手の競争でチーム力の向上を図った。殊勲のカジムリチャーズ起用が好例だ。2年前までイングランド3部でプレーしていた若者を、自らの目を信じて抜てきした。この日、主軸のDFロベルト・カルロスが負傷欠場したが、チームに影響はなかった。

 金星の裏側をカジムリチャーズが明かす。「後半9分の出場は驚いた。いつもじっくり様子を見る人だからね。出場前、監督は僕にベシクタシュ戦で見せたように相手に攻撃を仕掛けろと指示したんだ」。CL直前の試合で、チェルシー撃破のシナリオはできていた。相手の攻撃力を逆手に取る作戦-。それを物の見事に的中させた。

 先月25日に初孫が誕生し、「運気が上昇した」と公私に笑顔が絶えない。8日には敵地でチェルシーと再戦するが、ジーコ監督は「彼らは前に出てくる分、カウンターから得点するチャンスが生まれる」とにやり。その表情は、既に一流監督のものだった。(春日洋平通信員)