<ブンデスリーガ:ドルトムント2-0ブレーメン>◇11日◇ドルトムント

 得点王も夢じゃない!?

 ドルトムントの日本代表MF香川真司(21)が、あの中田英寿に肩を並べた。今年ホーム最終戦のブレーメン戦にフル出場し、後半25分に勝利を決定づける2点目を決めて勝利に貢献した。今季通算8点目でFWバリオスと並ぶチームトップ。16節終了時点の通算得点で、98-99年のペルージャ(セリエA)での中田と並び、欧州日本人最多得点となった。06-07年にFW高原直泰(現水原三星)がフランクフルトで記録した日本人シーズン最多の11得点超えどころか、得点王争いにも加わりそうな勢いだ。

 香川のゴールラッシュが止まらない。1-0の後半25分、右サイドで味方がボールを持つと、左手を挙げて、全力でファーサイドに走り込んだ。MFブラシュチコフスキのシュートをGKがはじくと、左足ダイレクトで押しこんだ。11月以降のリーグ戦6戦で4点目。勝負を決める1発に8万人の会場が揺れた。

 故障明けのFWバリオスに代わって攻撃の起点になった。普段は早めにパスを出すが、この日はキープして、自分で仕掛けた。「今年ホーム最終戦だったし、すごく気合が入っていた。それをピッチで表現したかったから今日はよく走った。(得点は)ダイレクトで枠に飛ばすには難しいボールだった。すごく集中して打てた」。クロップ監督も「誰でもが決められるゴールではない」と絶賛した。

 第16節で8得点。バリオスと並ぶチーム最多得点で、首位独走の原動力になっている。そして、中田がペルージャで衝撃デビューした98-99年の記録に並んだ。あの中村も本田も上回るペース。半分以上の18試合を残し、FW高原(当時フランクフルト)の持つ欧州日本人最多得点「11」まであと3点に迫った。

 好調なチーム事情と、開幕前から結果を出してチームメートの信頼を得たことがゴール量産の背景にある。だが最大の要因は「一瞬のスピード」。地元記者は「瞬時に相手マークから2メートルも離れて、パスを受ける。スペースを一瞬で見つけて、誰よりも早く飛び込む。ドイツ人にはない俊敏さがある」と分析する。

 一方、クロップ監督は「軽業師のように抜け出す能力は知っていたが、こんなに順応性が高いとは」と感心する。リーグ1年目で、しかも前半戦でこれだけゴールを量産するのは世界トップのストライカーでも難しい。今季、シャルケに移籍してきたオランダ代表FWフンテラールは7点、同チームの元スペイン代表FWラウルは6点。昨季ハンブルガーSVに加入した元オランダ代表FWファンニステルロイも5点にとどまっている。

 得点ランクも首位と5点差の8位に浮上した。上位でMFの選手は香川1人。それが彼の「速さ」を象徴している。このペースでいけばシーズン17得点。昨季はFWジェコが22得点で得点王になっているだけに、後半戦の出来次第では香川にも可能性がある。

 新たな悩みも出てきた。日本サッカー協会の原博実技術委員長が、来年1月のアジア杯の日本代表メンバーに招集することを明言している。決勝まで進出すればリーグ戦3試合を欠場する。「ただ自分としてはドルトムントに集中したいという気も多少ある。コメントしづらいです」と複雑な心境を吐露した。

 選手層が厚く、23歳のFWグロスクロイツらライバルもいる。結果を出し続けなければ、定位置を失いかねない。その緊張感もプラスに作用している。9月末から8試合無得点を乗り越え、再びエンジン全開になった香川は、シーズン終了まで突っ走りそうな勢いだ。【鈴木智貴通信員】

 [2010年12月13日8時51分

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