[ 2014年2月11日8時44分

 紙面から ]ジャンプ男子ノーマルヒルで8位に入賞し、笑顔で引き揚げる葛西(撮影・井上学)<ソチ五輪:ジャンプ>◇9日◇男子ノーマルヒル(HS106メートル、K点95メートル)

 葛西紀明(41=土屋ホーム)が、2回合計255・2点で8位入賞したのが日本勢の最高だった。1回目に101・5メートルで8位につけメダルの期待を抱かせたが、2回目は硬さが見られスムーズな飛び出しができずに100メートルと飛距離を伸ばせなかった。「本当に悔しい。2回目はメダルに届くと思って力んでしまった」と力なく答えた。

 日本選手団の主将という大役を引き受けて責任感が増した。モーグル会場に応援のために足を運び、本番2日前にはジャンプ陣としては異例とも言える開幕式にも参加した。モーグル女子の上村が惜しくもメダル逃すと「自分が勢いをつけたい」と燃えたが、またしても表彰台に届かなかった。

 ただ、下を向いてばかりはいられない。98年長野五輪の前年、放火に巻き込まれてやけどを負った母幸子さん(享年48)が亡くなった。最愛の妹久美子さん(36)は、93年に再生不良性貧血と診断され、一時は大会に応援にくるなど回復したが、昨夏に再び入院し、今は病床にいる。

 陽気な一面ばかりが取り上げられるが、41歳のジャンプ人生は、多くの悲しみと苦しみに彩られている。戦い続けるのは母に誓い、妹にささげたい金メダルへの思いがあるからだ。「100メートルを2回そろえたのは勝ったストッホと僕だけ。(15日の)ラージヒルにはつながった」。世界最多となる7度目の五輪を、このまま終わらせるわけにはいかない。【松末守司】