[ 2014年2月13日9時14分

 紙面から ]スノーボード男子ハーフパイプで、メダルセレモニーに臨む銀メダルの平野歩夢(左)、銅メダルの平岡卓(右)。中央は金メダルのユーリ・ポドラドチコフ(撮影:PNP)<ソチ五輪:スノーボード>◇11日◇決勝◇男子ハーフパイプ

 98年長野大会で正式採用されてから5大会目。日本スノーボード界待望の五輪初メダルが、2人の10代選手によってもたらされた。平野と平岡の技術はどこが優れていたのか。そこには、先人たちがつなげてきた努力があった。これまで日本選手の過去最高成績だった02年ソルトレークシティー大会5位入賞のプロスノーボーダー、中井孝治氏(29)が解説した。

 平野選手と平岡選手、2人にメダルをもたらした技術的な要因は2つあります。1発目から6発目までエアの高さをキープできていたこと、滑りの完成度が非常に高かったことです。

 ハーフパイプ(HP)は底を「ボトム」。カーブの位置を「アール」、飛び出す部分を「リップ」と言います。2人はエアに向かう際、リップから飛び出し、リップに一番近いところに着地している。「リップ・トゥ・リップ」が、特に平野選手はきれいでした。スピードがそのまま残るので次のエアにも高さを出しやすい。一方、多くの選手は、スピードが出にくくなるアールに落ちていました。

 さらに今回は雪質が悪くて削れやすく、その雪はボトムにたまります。欧米のHPはカチカチに硬く崩れにくい。それに慣れた海外選手は、シャバシャバな雪にエッジ(板の両脇)を取られて思うように滑れません。転倒も多かった。でも、2人が幼いころ練習した新潟や長野はそんな雪。基本的な滑走能力の高さに加えて、慣れがありました。

 今の選手は、海外の強豪選手と競う「Xゲーム」など高額賞金大会で技術を磨きます。昔は、出ても自分と国母和宏(カズ=06、10年五輪代表)だけ。それも特例で、本当はダメだった。当時の代表は、強豪選手が出ない「W杯」への出場が優先させられたんです。

 今、その考え方がダメだと気づいた。背景にはカズや村上大輔(02、10年五輪代表)の力があります。今回初めてつくられた「技術コーチ」に彼らが就き、トリック(技)を教えてきました。昔はコーチはいても、ビデオを撮り、ご飯をつくるだけの存在。技は、動画などで覚えたんです。

 その世代が直接、技術を伝えたんです。平野、平岡両選手はカズを尊敬する。格好じゃありませんよ。カズは本当はすごくマジメ。ジュースは一切飲まず、常に野菜だけ。遠征では必ずランニング靴を持ち込み2、3日おきに走る。その姿にです。2人が決めた「ダブルコーク1080」(縦2回転横3回転)はカズが基準。平岡選手のキャブ(通常と逆のスタンス)ダブルコーク1080は五輪前、カズに教わった技です。次の世代につながった。それが、メダル獲得の一番の要因だと思っています。