ジャカルタ・アジア大会日本選手団の主将を務める陸上男子100メートル代表の山県亮太(26=セイコー)が21日の現地入りを前に胸中を語った。

 2年後の東京オリンピック(五輪)に向けて最後となる夏の国際大会で弾みをつけたいところ。色紙には、一目瞭然のインパクト(衝撃)を与えたいという意味も込め、漢字一文字で「衝」と記した。【取材・構成=上田悠太】

 

 やはり見ている人にインパクトを与える大会にしたい。記録も順位も。アジアの水準はかなり上がっている。そこで勝つことができるならば、9秒台の数字が出せるならば、世界の8番(決勝進出)が近づく。世界を見据えた上でのステップにしないといけない。

 主将に選ばれた時は、率直に僕でいいのかと。単純な年功序列ではないにしても、僕よりキャリアがあり、世界で活躍できる選手はたくさんいる。去年の世界選手権も出ていないし、100メートルで10秒を切っているわけでもない。世界で活躍できている選手ではないという自覚があるから。

 だけど、声を掛けていただいた。正直、何ができるかは分からないけど…ありがたいという思いが上回った。僕が思う主将とは信頼、安心、そして期待を背負うこと。そういうことに応えてこそ1人前の選手。それを背負う自覚があるかは主将としては大事。まずは日本に勢いを付けられるようにしたい。慶大でも13年ユニバーシアードも主将を経験したが、今思うと、もっと堂々としておけばよかった。今は少しずつ競技力が上がってくると同時に少しずつ自信も付いてきた。堂々と振る舞えればいい。

 もう26歳。25歳とは心境も変化があった。特別な振る舞いで、他の人の目標にされようとかは思わないけど、自分も周囲から見られる年齢になってきたなという自覚は以前より増してきた。25歳までは自分の競技のことだけしか基本的に考えていなかった。もちろん今も第一に考えるべきは自分のこと、結果を出すことだと思っているけど、それだけではない。望もうが望むまいが、自然と下の世代が入ってくる。他にも背負うものも現実にある。自分の経験を何か還元できればいいと思いが募ってきた。

 西日本豪雨の被害も心配で父にさまざまなことを聞いた。広島市内の実家は何もなかったけど、住んでいる街の近くはひどくて、陸の孤島、通行止めになってしまった地域もあった。被害が深刻で心が痛い。地元は応援してくれる人が多い。もし、そんな人たちが、僕が元気に活躍する姿をお見せすることで、少しでも前向きになれる力になれるなら、深いことは考えず、今を全力でやるしかない。