ガーナ人の父を持つサニブラウン・ハキーム(16=東京・城西高2年)が、男子短距離で北京切符を確実にした。男子200メートルで向かい風0・4メートルの決勝を20秒34で優勝。100メートルとの2冠を達成し、03年ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の大会記録を0秒06、13年桐生祥秀(現東洋大)の高校記録を0秒07とダブルで更新した。8月の世界選手権(北京)参加標準記録(20秒50)も突破。16歳での同選手権出場が確実となり、短距離個人種目で最年少記録になる。

 16歳が驚異の走りで北京への扉を開いた。男子200メートル決勝。サニブラウンが50メートル付近から先頭に立つ。後続を引き離してゴールすると右腕を豪快に振り上げた。この大会で100メートルを含めて日本短距離勢初の頂点に立ち、100メートルと200メートルの2冠はもちろん日本勢で初めて。自己ベストとなった20秒34には3つの意味がある。

 (1)ボルト超え 03年にボルトが作った大会記録20秒40を12年ぶりに更新。最大の目標にボルトが持つ100メートルの世界記録9秒58の更新を掲げており、幸先のいい“1勝”となった。

 (2)桐生超え 13年に桐生が樹立した20秒41の日本高校記録を更新した。桐生に続く逸材として、大きな存在感を示した。しかも日本歴代8位の好記録だ。

 (3)北京切符 世界選手権の参加標準記録20秒50を突破。6月に日本選手権で2位になっており、16歳での北京大会行きが確実。13年の同モスクワ大会に17歳で出場した桐生を抜いて短距離個人種目では最年少だ。

 ガーナ人の父と、短距離で高校総体に出た日本人の母を持つ。昨年の高校総体では「体力的に持たないので、100メートルは出ません」と200メートルに専念して2位だった。線の細かった少年がわずか1年で急激に成長した。「世界ユースで100メートル、200メートルで2冠をとりたい」という宣言通りだ。

 3年前の12年は身長172センチだったが、現在は187センチ。日本陸連の山崎一彦強化副委員長は「最近、身長(の伸び)が止まってこれからどうなるか」。粗削りだが、伸びしろもたっぷりの16歳が北京に向かう。

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年(平11)3月6日、福岡県生まれ。小3で陸上を始める。20年東京五輪に向けた日本陸連の育成プロジェクト「ダイヤモンドアスリート」の一員。100メートルの自己記録は10秒28。6月の日本選手権は100メートルと200メートルで2位。187センチ、74キロ。