<陸上:セイコー・ゴールデングランプリ川崎>◇8日◇等々力

 女子短距離界のエース福島千里(22=北海道ハイテクAC)は、400メートルリレーで43秒39の日本新記録を樹立した一方、注目の100メートルは左ふくらはぎにけいれんを起こし、11秒56の4位に終わった。

 女王をまた悪夢が襲った。女子100メートルでアジア大会短距離2冠の福島が、ゴール手前10メートルで左足ふくらはぎにけいれんを起こし失速し、11秒56の4位に終わった。4月29日の織田記念国際の女子100メートル決勝を棄権した時と同じ左足。ゴール後、観客席に向かって手を振って気丈に振る舞ったが、選手控室に戻ると涙を流した。「違和感を感じたんで減速してゴールしてしまった。思い通りの走りができず残念」と声を絞り出すように話した。

 場内が騒然とする中、選手控室ですぐに医師に診てもらいアイシングを施した。幸い病院には行かずそのまま北海道への帰路に就いた。指導する中村宏之監督(65)によると「心の中に、またなるんではないかという不安がある。これが癖になると心配だが、症状自体は大したことはない」と話した。

 1日で天国と地獄を味わった。1種目目の女子400メートルリレーで3走を務め、43秒39の日本新で優勝。8月の世界選手権(韓国・大邱)の参加標準記録(44秒00)を突破し、チームメート4人で手を取り合い喜び合った。その1時間半後に表情は一変した。100メートルは今季、1度もしっかり走れていない。「早くいつも通り走りたいです」ともどかしそうだった。今後は予定通り、12日の大邱国際(韓国)から22、26、29日のアジアGP(中国)に出場する。「日本選手権(6月、埼玉・熊谷)でしっかり走って世界選手権につなげたい」と前を向いた。【松末守司】