先輩の涙を汗に変えて走る-。第89回箱根駅伝(来年1月2、3日)で連覇を目指す東洋大で、1年生でただ1人メンバー入りした服部勇馬(仙台育英)が、先輩の思いを胸に快走を誓った。13日、埼玉県内で練習を公開。前回大会でアンカーを務めながら今回のメンバーから外れた主将の斎藤貴志(4年)は、仙台育英の3学年上の先輩。「粘りの走りを受け継ぐ」と力強く話した。

 高校の先輩が歓喜のテープを切る。今年1月3日。区間賞で大手町のゴールに飛び込む斎藤の姿を、服部は新潟・十日町の実家に映るテレビで見た。「かっこよかったなあ、って思いました」。続けて出た言葉は「でも、もうあの人は走れないんですよね」。少しさびしそうだった。

 在学は重ならないが、仙台育英の夏合宿などでアドバイスをもらった。「いろいろと世話してもらい、入学後も分からないことを教えてもらいました」と服部。10日のエントリー発表で自分の名前が外れた後も「オレの分まで頑張ってくれ」と逆に励まされた。やるしかない。「自分にとって斎藤さんは『キャプテン』というより『高校の先輩』という存在。斎藤さんの分もしっかりと、粘りの走りを受け継ぎます」。

 自らの雪辱もかかる。11月の全日本はアンカーの大役を任され1分7秒の貯金をもらったが、駒大のエース窪田に逆転された。「1週間はへこんだ」というが、酒井監督から「泣いてても強くなれない。立ち上がって前を向こう」と背中を押された。今では「いい経験をさせてもらった」と切り替えている。

 「脱柏原」で臨む連覇への道。常勝軍団の仲間入りは、柏原の1年時から始まった。適性から山登りはないだろうが、スーパールーキーの再来をファンは待望する。男の3兄弟全員に「馬」の字がつく服部。生き馬の目を抜くほどのスピードで、箱根路を駆け抜ける。【渡辺佳彦】

 ◆服部勇馬(はっとり・ゆうま)1993年(平5)11月13日生まれ、新潟県出身。小学校ではサッカー、十日町市立中里中から陸上とスキー距離を始める。仙台育英から東洋大史上初めて長距離2種目で「13分台&28分台」の記録をひっさげて入学。自己ベストは5000メートルが13分56秒52、1万メートルが28分52秒55。家族は父好位(よしのり)さん(42)母麻理子さん(42)。弟弾馬さんは愛知・豊川高3年で来春、東洋大入学予定。弟風馬さん(15)妹葉月さん(9)の4人きょうだい。176センチ、60キロ。血液型O。