日本のグレコローマンスタイルが、存続の危機にひんした。

 出場した59キロ級の田野倉翔太(25=クリナップ)、71キロ級の花山和寛(23=自衛隊)、80キロ級の前田祐也(21=拓大)、130キロ級の園田新(21=拓大)は、いずれも1回戦で敗退。前日の3階級と合わせて、7人で1勝しかできていない。9日に85キロ級を残しているとはいえ、過去最低の成績となるのはほぼ確実。リオデジャネイロ五輪出場選手0の可能性まで指摘されだした。女子や男子フリーと比べ、グレコの低迷ぶりは目を覆うほど。20年東京五輪を前に、日本のグレコ撤退もささやかれ出した。

 頼みのエース、59キロ級の田野倉が昨年3位のベルゲ(ノルウェー)に敗れた瞬間、日本グレコの威信は音を立てて崩れた。日本協会の福田会長は「グレコは山(新潟の合宿所)にこもらせて練習させろ」と激怒。馳副会長は「こんな状態では、リオには1人も行けない」と首を振った。

 日本勢は初日に続き、この日も5位までに与えられる今大会での五輪枠獲得を逃した。惨敗だ。メダル0や入賞者なしは珍しくないが、負け方が最悪。前日に66キロ級の泉がナミビア選手に勝っただけで、あとは出れば負け。西口監督は「このままでは、日本のグレコが終わる」とうつむいた。

 メダル有望なら強化費も出るが、可能性のない競技に回す余裕はない。日本協会がグレコにかかる費用を女子や男子フリーに回す可能性さえある。五輪に出場枠ができて以来、フリーと同じように選手を輩出してきた。

 「遠征は自腹。自衛隊や日体大、拓大はグレコをやめるかもしれない。グレコが終われば、終わらせたのはオレとお前たちだ」と、西口監督は選手を前に悲壮な思いを口にした。「奮起をうながす」レベルではない。現実を選手に知らせただけだ。来春の五輪予選次第で「グレコ不要論」が噴出する。64年東京五輪のために本格的に強化を始めた日本のグレコが、20年東京五輪を前に最期を迎える。