これぞ野獣調整!? 福岡国際センターで開催される柔道の全日本選抜体重別選手権開幕を翌日に控えた1日、ロンドン五輪女子57キロ級金メダリストの松本薫(28=ベネシード)が独特の「調整法」で仕上げに入っていた。

 「エメラルドグリーン!」。突如叫んで一目散にその色の対象物へと猛ダッシュ。報道陣の上着に先にタッチすると、ぜえぜえ言いながら喜んでみせた。

 練習パートナーの池田彩華と興じていたのは、子供の遊びである「いろ鬼」。鬼役が指定した色を、先に触れるかどうかの鬼ごっこで武道館内をところ狭しと駆け回り、獣のような軽快さで次々に獲物を捕らえていった。

 その前に興じていたのも「だるまさんが転んだ」。畳の上で技の確認をする他選手とはまったく違う光景だった。

 もちろん、子供遊びだけをしているわけではなく、みっちり稽古をした後の行動だが、池田いわく「ちょこちょこやりますよ」。俊敏性などが鍛えられそうな遊びの中で、楽しみながらメリハリを付けて調整しているようだ。

 その後の会見でも、オリジナリティーあふれる松本らしさは全開。この日がエープリルフールにちなみ、周りに「朝起きて鏡を見たら羽が生えててびっくり」と吹聴した。後輩たちからの反応は、女子48キロ級の浅見からは「先輩なら生えてそう」、同級の近藤からは「先輩、クオリティー低いですね」とさまざまだったが、本人は満足そう。

 「4年前の方がピリピリして焦っていた。いろいろ経験して、五輪は五輪、選抜は選抜と考えている」。

 五輪2連覇へ、代表入りは確実視される状況に心は平静を保つ。「どの試合もベストを尽くすだけ。選ばれてから五輪に向けていろいろ悩めればいい」と泰然自若としていた。