全国高校ラグビー大会(花園)で4度の優勝を誇る伏見工(京都)が7日、「伏見工・京都工学院」の合同チームで初陣に臨んだ。京都府総体初戦の亀岡戦(太陽が丘)を133-0で勝利。合同チームを率いる松林拓監督(49)は「門出という気持ちはあった。合格点ですね。伏工のカラーと工学院のカラーの、いいところを取り入れていきたい」とチーム作りの理想像を語った。

 4月1日に伏見工と洛陽工が統合再編され、京都工学院が開校。1期生が入学した。ラグビー部には京都工学院の生徒である1年生22人が入部。洛陽工には同部がなく、伏見工の2、3年生と、京都工学院の1年生で活動している。伏見工の名前は18年4月の完全移行をもって外れる。この日の試合メンバーは、3年生24人と2年生1人で構成された。

 登録名は「伏見工・京都工学院」ながら、伏見工伝統のジャージーは変わらない。「燃えよ! 伏見工ラガーメン」でおなじみの横断幕も、グラウンド脇に掲げられた。一方、大会前に合同チームで登録しているため、京都工学院に籍を置く1年生もいつでも試合に出場できる。合同チームの全部員は88人。京都工学院の22人でも単独チームが作れるため、現66人の伏見工と2チームを、それぞれが単独で運営する選択肢もあった。しかし、高崎利明ゼネラルマネジャー(GM=54)は「もともとそんな考えはなかった。同じチームの1、2、3年生という感覚」とキッパリ否定した。

 4月からは全面人工芝に、照明完備、伏見工の約4倍の広さを誇るウエート場を備える京都工学院を、合同チームの活動拠点にしている。伏見工には定時制があるため、平日の練習時間に制限があったが、その弱みも解消される。チーム強化にはこの上ない環境だ。しかし、それ以外は、来春に伏見工の全日制が京都工学院に移転するまでの間、伏見工グラウンドを使用することに決めた。高崎GMは「OBの思いが詰まっている」と語り、松林監督も「それをしないと、1年は土のグラウンドを知らないまま進む。(京都工学院の環境は)本来、公立校で当たり前ではない」とうなずく。左胸に「伏見工」と記されたジャージーは、現2年が引退するまで着用。京都工学院に完全移行後も、現在と同じ赤と黒のデザインを採用する予定だ。

 この日、試合を見つめたプロップの長谷川翔舞(1年)は「(先輩は)すごく強かった。僕らは(京都工学院の)1期生として、伝統を受け継がないといけない」と目を輝かせる。一方で、ゲームキャプテンを務めたCTB赤木凜(3年)は「1年は真面目で、今までと少し色が違う」と学校によるカラーの違いを正直に語った。試合後の全体ミーティングで松林監督は「東福岡を倒す、今日が第1歩」と口にした。目標は今春、全国高校選抜を制した東福岡撃破。それは日本一を意味する。「日本一」と「伝統の継承」。ラグビー界屈指の名門校は腹をくくり、二兎(にと)を追っていく。【松本航】

 ◆伏見工ラグビー部 1959年(昭34)創部。75年に「泣き虫先生」で知られる山口良治監督(現総監督)が就任し、80年度に花園制覇。日本一までの道のりが「スクール☆ウォーズ」でテレビドラマ化された。花園は80、92、00、05年度に優勝。選抜は07年に初優勝。主なOBは平尾誠二(現神戸製鋼GM)、15年W杯イングランド大会日本代表SH田中史朗(パナソニック)。