二十歳のエースが08年北京大会以来2大会ぶりの五輪切符に導く。バレーボールのリオデジャネイロ五輪世界最終予選兼アジア予選男子大会は今日28日、東京体育館で始まる。進化を続けるウイングスパイカー石川祐希(中大)が初めて五輪をかけた最終予選に挑む。プレッシャーを感じたことがないと豪語する新星が、そのスパイクを世界に見せつける。今日28日の初戦ではベネズエラと対戦する。

 さわやかな笑顔は変わらず、しかし、石川の決意は固かった。「やるかやられるかなので。覚悟を持ってやりたい。心も体も準備はできている」。初めて挑む、五輪をかけた9日間計7試合の戦い。口調には力がこもっていた。

 初戦のベネズエラ戦に向けて午後4時ごろから東京体育館で調整を行った。実戦形式の練習では強烈なスパイクを連発し、好調さをうかがわせた。痛めていた左膝も「よくなっている」と笑顔。3月まではジャンプ練習を回避する状態にあったが、ふわっと高く浮き上がる滞空時間の長いジャンプが戻った。南部監督は「全く心配していない。今年招集した中で一番ジャンプしている」と太鼓判を押した。

 究極の自然体だ。一身に期待を背負いながら、「これまでプレッシャーを感じたことは1度もない」とさらりと言ってのける。緊張を感じることもほとんどないという強心臓ぶりだ。会場の東京体育館のセンターコートに初めて立った愛知・星城高3年時の春高バレー決勝が「強いて言うなら最初だけ緊張した」。今も変わらない、日の丸を背負う大学生とは思えないメンタルの強さ。「緊張したところで、という感じ。強い相手とやりたいので」。優しい笑顔の裏に、熱い闘志を秘める。

 左膝を痛めてから約半年間でレシーブ練習に集中的に取り組んで、課題だった守備力も向上した。ただ、「最後は打たないといけない。割り切るところはしっかりしたい」と自覚している。2大会ぶりの五輪へ。3戦目の強豪ポーランド戦には、中大のチームメートも応援に駆けつける。頼もしい右腕で、男子復活の道を切り開く。【岡崎悠利】

 ◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)1995年(平7)12月11日、愛知県岡崎市生まれ。矢作南小4年のとき競技を始める。星城高を経て14年に中大に進学。同9月のアジア大会(仁川)で日本代表デビュー。同12月からはイタリア・セリエAのモデナと1年契約し、シーズン途中からは主力としてチームのプレーオフ決勝進出の原動力になった。191センチ、80キロ。血液型はAB。

 ◆世界最終予選兼アジア予選 8カ国が参加し4チームが五輪出場権を獲得する。勝利数、勝ち点、セット率、得点率の順で順位を決める。勝ち点は勝ちが3、フルセットでの敗戦が1、負けが0。日本はアジア4チームの最上位になるか、それ以外の7チーム中上位3位に入れば出場権を獲得できる。