少年B女子50メートル自由形決勝で、池江璃花子(16=ルネサンス亀戸)が24秒67と、自身の持つ日本記録を0秒07更新して優勝した。レース前から日本新を宣言。有言実行で、今季11度目の日本記録を樹立した。先月下旬には背中を負傷。自由形の練習がほとんどできない中での快挙だった。リオデジャネイロ五輪では日本記録3連発で驚かせた。今季最後の大会でも16歳が底知れぬ力を見せた。

 金メダリストが驚愕(きょうがく)の表情を浮かべた。レース後のインタビューを受けていた萩野が池江の日本記録のアナウンスを聞く。五輪後の疲労が蓄積した中で、今季11回目の日本記録。「僕ら凡人とは違いますから」。五輪金メダリストが、あきれるように話すほど、16歳は常識を超えている。

 万全ではない。五輪帰国翌日から休む間もなく、全国高校総体(広島)に出場。翌週のジュニアオリンピックも出たが、さすがの16歳も疲労はたまる。先月28日、突然背中に痛みが発症。呼吸や腕を回すだけでも患部は痛んだ。9月2日からの北海道・函館合宿では自由形の練習はまったくできない。危機的状況だったが、50メートル自由形の日本記録の目標は捨てなかった。

 同種目の日本記録は今年2月のコナミOPで出している。「それからずっと練習をしてきたし、0秒01でも速くなっているはず」。大会前から周囲に「日本記録を出す」と公言し、自分にプレッシャーをかけた。この日のウオーミングアップでも背中は痛んだが「レースだと痛みは忘れて集中できた」と、自らの記録を0秒07上回る24秒67の日本新記録で、今季最後のレースを締めた。

 初の五輪では100メートルバタフライの日本新3連発で、メダルに0秒23差の5位入賞。リレーも含めて日本人過去最多7種目を泳ぎ切った。激動のシーズンは終わる。4年後の東京五輪の目標は自由形の金メダル。「これからもどんどん日本記録を更新して、東京までこの勢いを止めないようにしたい。途中で記録が止まっても気持ちだけは負けないようにしたい」。16歳の底は知れない。【田口潤】