競泳の男子200メートル平泳ぎで世界記録を樹立した渡辺一平(19=早大)が「絶対王者」になる。30日、都内で日本水連の表彰式に出席。前日29日の東京都選手権で人類初の6秒台となる、2分6秒67の世界記録を出した19歳は「ぶっちぎった選手になりたい」と、リオデジャネイロ五輪男子100メートル平泳ぎで世界記録で金メダルを獲得したアダム・ピーティ(22=英国)を将来像に掲げた。

 一発屋では終わらない。1度、世界記録を出しただけでは満足しない。衝撃の世界新記録から一夜明けたこの日、渡辺は4月の日本選手権(愛知)と7月の世界選手権(ハンガリー)で「(世界記録を)更新するしかない」と、高いノルマを掲げた。

 「ぶっちぎった選手になりたい」。憧れの北島康介、今の現役ではアダム・ピーティがモデルになる。15年4月の英国選手権男子100メートル平泳ぎで、史上初めて58秒の壁を破る57秒92の世界記録をマークした。昨年リオデジャネイロ五輪予選で57秒55の世界記録を更新、決勝も57秒13の世界新記録で金メダルを得た。2位に1秒5以上の大差。世界に敵なしのピーティのような絶対王者を目指す。

 伸びしろは実感する。世界記録の映像を見返した。「50、100、150メートルでも(ターンの)タッチが合っていなかった。150メートルのターンの浮き上がりでも焦りすぎた」と、すぐに複数の改善点を把握。苦手だったスタート、ターンをさらに磨けば、年3回の世界記録更新は可能と見通す。

 19歳の早大生。この日の3限には「スポーツ思想史」の試験があった。世界記録を出した29日は午後10時半に帰宅すると、午前0時まで机に向かった。「持ち込み可だったので。勉強したところが(試験に)出たので、すらすら書けた」と、300通以上の祝福ライン、メールが来たが、浮かれることはない。「自己ベストを更新しただけと思っている。世界も(2分)6秒台をどんどん出す。このままでは抜かれる」。どこまでも貪欲な姿勢に「絶対王者」への予感が漂う。【田口潤】

 ◆渡辺の世界新VTR 29日に東京辰巳国際水泳場で行われた「北島杯」こと東京都選手権男子200メートル平泳ぎで2分6秒67の世界新記録を樹立。最初の50メートルから28秒95でトップに立ち、100メートルを1分1秒33でターン。150メートルを1分34秒02と山口観弘が保持していた世界記録から0秒76速いペースで折り返し、世界記録を0秒34更新した。コースは08年に北島康介氏が同種目で世界新記録をマークした時と同じだった。