2大会連続の五輪出場を決めた「スマイルジャパン」は、五輪最終予選で勝負強さを見せた。3試合で13点を奪い、失点は3。日常からチームの危機を全員で考え、打開策を練ってきた訓練が、負ければ終わりの正念場で発揮された。

 主将大沢ちほのコメントに、全勝したチームの強さが凝縮されていた。「第3Pになっても自分たちの動きは最後まで止まらなかったですね。3試合とも、相手は疲れているのかなと感じました」。外国チームに体格で劣っても、スタミナは決して負けなかった。

 第2Pで先制ゴールを奪ったFW藤本もは「あれは練習してきた形です。ゴール前で何度もパックをたたいて入りました。監督からは、『GKというのはシュートを何度も打たれると少しずつ崩れていくもの』と、言われてました。先制点を取れて誇りに思います」と、満足そうに振り返った。

 走り込み、コンビネーションを繰り返してきたからこそ、大一番でも慌てることはない。実力を発揮できたのは、揺るがないメンタルを培ってきたからだ。

 山家メンタルコーチの指導の元、選手は精神面も鍛えてきた。例えば、チームに起こり得る危機的状況をみんなで書き出す。その解決策も含めて話し合う作業をしてきた。山家コーチは「イメージ武装することで、耐性が生まれます。その作業で、チームが揺らいだ時に自分たちで立て直せる力が出てきます」と、狙いを説明した。

 チームの目標は、この日から五輪初勝利、そしてメダルへと進化していく。大沢も「これがゴールじゃない。ここから進化する」と力強い。鍛えたフィジカルと、ぶれない心でソチ5戦全敗からの名誉挽回に挑む。【井上真】

 ◆第3ピリオド「セット」で勝負かけた山中監督は、第1Pのセット(選手の組み合わせ)を1つずらして起用した。「ドイツの3セット目が強いのは分かってました。そこにうちの1セットをぶつけました」。これで試合開始直後から激しい攻防に持ち込み、狙い通りの試合プランを進めることができた。第3Pではタイムをかけ「スイッチを入れろ、最後だ、ギアを上げろ」と声をかけ、直後に久保の3点目が生まれた。「試合前からドキドキでした」。地元苫小牧で大役を果たした。