「ハネタク」の次は「ヨシタク」をお願いします-。JOC(日本オリンピック委員会)の「アスナビ」説明会が12日、都内の味の素ナショナルトレーニングセンターで開かれ、カヌースラローム・カヤックシングルの日本王者・吉田拓(28=協栄)ら4人のアスリートが勤務先、サポートを求めて自分自身をセールスした。アスナビはトップアスリートと企業との相互理解を図り、就職を支援するJOCの取り組みで10年から行われている。

 今月上旬に富山県で開催された日本選手権兼NKH杯を制した吉田は、会場に愛用のカヌーを持ち込んで熱弁を振るった。アスリート採用に前向きな企業関係者を前に「東京オリンピックでメダルを取る。その覚悟がなければカヌーを続ける意味がありません。夢を実現するためには、東京まで、より競技に集中できる環境が必要です。ぜひ、よろしくお願いします」。故障もあってリオデジャネイロ五輪出場を逃しただけに、20年東京にかける思いは強い。

 そのリオ五輪では羽根田卓也(29)がカナディアンシングルで銅メダルに輝き、「ハネタク」ブームを巻き起こした。日本選手権の観戦者が急増するなど競技への注目度も高まったが、選手個人を取り巻く環境は相変わらず厳しい。吉田は現在、スポーツ施設やビルの管理・メンテナンス会社・協栄に勤務、サポートを受けている。それでも1年の半分は欧州を転戦する生活では、時間も金銭も不足している。

 「羽根田さんは欧州に拠点を置いて結果を出しました。素晴らしいと思います。でも、自分は日本から世界と勝負して結果を出したいです。『ハネタク』の次は『ヨシタク』ということで頑張ります」。京都でカヌーを始め、現在は東京・青梅でトレーニングを重ねる吉田は、最後まで熱いアピールを続けた。【小堀泰男】

 ◆吉田拓(よしだ・たく)1988年(昭63)9月15日、京都府生まれ。幼いころから父親の影響でカヌーに親しみ、7歳で大会出場。京都府立木津高から駿河台大卒。スラローム・カヤックシングルで16年日本ランキング1位、日本選手権は16年2位、17年優勝。

 <その他の参加選手>

 ◆自転車・BMX=吉井康平(よしい・こうへい)1995年(平7)3月14日、東京都生まれ。13年7月、全日本選手権ジュニア優勝、16年5月、ジャパンシリーズ岸和田大会優勝、アジア選手権エリート2位、同11月、ジャパンシリーズ広島大会2位。

 ◆ボブスレー=浅野晃佑(あさの・こうすけ)1990年(平2)4月12日、愛媛県生まれ。日大時代は陸上10種競技。17年1月、欧州カップ2人乗り22位。

 ◆同=伊藤隆太(いとう・りゅうた)1989年(平元)1月6日、東京都生まれ。帝京大時代は陸上ハードル競技。16年12月欧州カップ2人乗り33位。