<ボクシング:高校総体>◇最終日◇3日◇埼玉・独協大学35周年記念館ほか

 モスキート級(45キロ以下)決勝で、原隆二(静岡・飛龍3年)が王者の貫禄(かんろく)を見せた。判定で柏崎刀翔(石川・大聖寺実3年)を下し、同競技で県勢初の2連覇。今大会の県勢金メダル1号にもなった。1年時だった06年12月の全国高校選抜東海大会決勝で敗れて以来、公式戦22戦負けなしの王者が3冠目を手に入れた。また、ミドル級の岡田良綱(浜松工3年)は2日の準決勝で敗れて銅メダルだった。

 勝ち名乗りを受けた瞬間に、高々と左手を突き上げた。地元から駆けつけた50人近い応援団の方へ体をひねり、原は歓喜の叫び声を発した。ボクシングで県勢初の2連覇。昨年の総体、3月の全国選抜に続き、堀内敬三監督(56)と約束していた「高校3冠」を取った。「昨年とは違う喜びで、素直にうれしい。(ガッツポーズは)良くないけど、負けちゃいけないと熱くなってしまいました」と、照れ笑いを隠せなかった。

 昨年準決勝で判定勝ちした柏崎に、わずかなすきも与えなかった。足を止めずに先手を奪い、鋭い左ボディーで動きを止めた。判定にこそもつれたが、終わってみれば18-7の完勝。「内容は全然ダメだったが、勝ちは勝ち。1ラウンドで大丈夫だと思ったけれど、油断せずに戦いました」。試合後のコメントには、王者の風格が漂っていた。

 県勢28年ぶりの優勝からこの1年、誰よりも勝利に飢えてきた。4月末から五輪合宿に参加し、週末は東農大、日大といった関東大学リーグ1部の強豪校に乗り込んだ。1階級上で高校6冠の、ボクシング元世界2階級王者・井岡弘樹氏のおい井岡一翔(東農大)とも「五分のスパーで自信をつけた」(堀内監督)。自信は行動に現れ、前日2日にミドル級(75キロ以下)の岡田が鼻血を出して弱気になった時、156センチの体で大男を怒鳴った。人一倍強い闘志。それが、2年近い公式戦無敗の源だった。

 休む間もなく、8月末の国体東海予選へ向けて合宿が始まる。それも意に介さず、今度は「4冠目をしっかり取りたい」と言った。まだ、王者の欲は満たされていない。【今村健人】