<スキー:W杯ジャンプ>◇個人第23戦(HS127メートル、K点120メートル)◇10日◇フィンランド・クオピオ

 38歳4カ月の岡部孝信(雪印)がW杯史上最年長優勝を果たした。123・5メートル、123メートルの好飛躍をそろえ、金メダルを獲得した98年長野五輪直後の98年3月以来、11シーズンぶりとなる通算5勝目を挙げた。04年2月に葛西紀明(土屋ホーム)が31歳8カ月で勝った最年長優勝記録を大幅更新。今季はW杯前半戦のメンバーから漏れていたが、後半戦から復帰すると2月の世界選手権では団体銅メダル獲得に貢献していた。

 ジャンプ界最年長の岡部の心は穏やかだった。小差の4位で迎えた2回目。「練習でいいジャンプができている。自分の飛躍をすればいい」。助走速度が低く抑えられた厳しい設定に多くの強豪が苦しんでいたが、岡部はK点付近で伸びて123メートル。葛西を含めて1回目上位3人は次々に失速し、逆転でW杯史上最年長優勝記録を7年近くも塗り替えた。「まさか優勝できるとは…。うれしい」と喜びがあふれ出た。

 06年トリノ五輪後、新しい飛び方に挑戦して低迷したが、今季は国内戦で7勝し、途中からW杯に復帰。銅メダルを獲得した世界選手権団体で「いい滑りが見つかった」。個人2戦で惨敗後に雪印の斉藤コーチに電話で相談。ビデオを見た同コーチに「腰の位置が微妙に遅れている」と指摘され、修正。銅メダルを獲得した団体の2回目の135メートルジャンプにつなげた。

 19歳のシュリーレンツァウアー(オーストリア)ら若年層が席巻するW杯に、38歳で出ているだけでも驚きに値する。W杯を30歳以上で優勝したのは過去に4人だけ。今季、W杯札幌大会に参戦した欧州各国のコーチ陣も、日本の年齢層の高さに「なぜ若手を起用しないのか」と見下していたという。

 岡部の復活は世界にも大きな影響を与えている。W杯総合優勝を2度経験した31歳のアホネン(フィンランド)が「年上の岡部や葛西が好成績を出している。自分もまだいける」と、2月に来季2シーズンぶりに現役復帰することを表明した。

 10年バンクーバー五輪への期待も高まる。「あまり考えない。目の前の試合で自分のベストを尽くせるように頑張るだけ」。アラフォー・ジャンパーが力強く語った。