<ビーチバレー:東京オープン>◇最終日◇6日◇東京・お台場海浜公園

 アイドルからスーパーアスリートへ-。浅尾美和(23)が西堀健実(27=ともにエスワン)とのペアで、日本トップレベルの実力を証明した。決勝で第1シードの浦田聖子(28)楠原千秋(33)組と対戦。惜しくも1-2でツアー初優勝を逃したが、第2セットに、4度マッチポイントを握るなど、1時間19分に及ぶ大激戦を演じた。豪雨にもかかわらず690人収容の会場に900人が殺到。人気の浅尾組に実力も備わったことで、日本ビーチバレー連盟(JBV)の川合俊一会長(46)は、約1万人収容の東京・有明コロシアムでの世界初屋内大会開催プランを明かした。

 雨なのか、涙なのか。浅尾のほおはぬれていた。最後は相手のサーブに浅尾が飛び込んだが、ボールは無情にもネットに。ツアー初優勝は豪雨とともに、目の前から流れていった。「私たちは(組んで)5年目。もう優勝を当たり前のものにしないとダメ」と浅尾はくちびるをかんだ。

 悲願まであと1ポイントだった。第1セットを先取。第2セットも20-18でマッチポイントを迎えた。しかし、そこからが遠かった。計4度のマッチポイントは、2度の五輪を経験している楠原の技に、ことごとくはね返された。最後は24-26で逆転され、最終セットで力尽きた。

 初優勝こそ逃したが、「万年3位」と言われ、人気が先行したペアが、実力でも日本トップレベルに成長したことを証明した。決勝進出は昨年4月のツアー開幕戦に続く2度目。前回は決勝はストレート負けだった。それでも「全然劣っているとこはない」と西堀は手応えをつかんでいた。

 開幕前の1カ月間、サイパンと沖縄合宿で猛練習を積んだ。苦手のレシーブ練習中に、自分に腹を立てて、浅尾は泣いたこともあったという。3月からはアジアサーキットを初めて2人だけで転戦。「精神的にも成長した」(西堀)。この日、浅尾は好レシーブで拾いまくり、西堀は課題のブロックを何度も決めた。「きっちりと冬場に練習してきている。練習はウソをつかない」と、対戦相手の浦田も成長に驚いた。

 「浅尾人気」も相変わらず衰えていない。この日は豪雨にもかかわらず、収容690人の会場に900人が押しかけた。JBVの川合俊一会長も「雨でこんなに入ったのは初めて。例年なら定員の2割ぐらい」と驚いた。その超満員の観客に浅尾は、実力もしっかりと見せつけた。

 美ぼうと明るい性格で、ホンダやアサヒビールなど6社のCMに出演している。そして、今回新たに清涼飲料水「アクエリアス

 ゼロ」(日本コカ・コーラ社)のキャラクターにも抜てきされ、13日からCMが流れる。同社は過去にレッドソックスの松坂大輔投手、北京五輪男子平泳ぎ2冠の北島康介ら超一流トップアスリートと契約している。浅尾も晴れてその仲間入りを果たしたことになる。

 過熱する浅尾人気に、実力も備わってきたことで、世界初の屋内ビーチバレー開催プランも浮上した。川合会長は「開閉屋根付きの有明コロシアムに砂を入れ、室内ビーチを考えている。晴れの時は屋根を開いて、雨の時は閉める。世界初だと思うよ」。約1万人を収容する大会場での大会開催も現実味を帯びてきた。

 「3位(開幕戦)、2位ときたから、今度は優勝です」と浅尾。アイドルから真のアスリートに生まれ変わる時が、目の前にやってきている。【吉松忠弘】