<陸上:全日本大学駅伝>◇1日◇愛知・熱田神宮~三重・伊勢神宮(8区間106・8キロ)◇出場26チーム

 日大が5時間21分4秒で4年ぶり3度目の優勝を果たした。最終8区のギタウ・ダニエル(4年)が3位でたすきを受け、トップと1分53秒差を逆転。入学以来の3大駅伝(出雲、全日本、箱根)で合計73人抜きとした。10月の出雲駅伝に続く優勝で、残すは来年1月の箱根駅伝だけ。大東大と順大の史上2校しか成し遂げていない同一年度での3冠へ、王手をかけた。

 ダニエルにたすきが渡った時点で、日大の優勝が見えた。8区19・7キロで2分差もなければ、射程圏内。200メートル先までくっきり見えるケニアからの留学生は、4キロ付近で東洋大を捕らえた。7・4キロで明大の細川をかわすと、軽く左手を挙げた。危なげなく伊勢路を駆け抜け、05年以来の優勝をもたらした。

 1区を務めた07年全日本を除く3大駅伝で、計73人を抜き去った。「うわぁ、73人か。びっくりした。そんなに多いとは思わなかった」。10月の千葉・館山合宿では、堀込ヘッドコーチにアンカーを直訴。同コーチが「その一言が大きくて、自然と区間の組み立てができた」と話すほど、影響力を与える存在になった。

 日本人選手も、発奮材料にしている。この日の区間賞は、ダニエルともう1人の留学生ベンジャミン。区間2位の堂本、3位の谷口らの頑張りが光ったが、ケニア人の活躍なしに優勝はなかった。主将の谷口は言う。「ダニエルの逆転を見ると、周りから、そういう目で(ケニア人頼みと)見られてしまう。日本人が1人でも区間賞を取れば、払しょくできる。それは、箱根しかない」。

 兵庫・報徳学園出身の谷口は入学当初、留学生の存在に複雑な思いもあった。外国人の力が突出する高校駅伝を経験した背景もあった。だが、文化の違いに戸惑いつつも異国で頑張る姿に見方が変わり、刺激を受けた。「自分勝手じゃないし、人情的。ダニエルも頑張って、僕らも期待に応えられるようにしたい」と話す。

 箱根は規則上、留学生の出場は1人まで。距離が2倍以上に伸びる箱根では、ダニエルだけでは勝つことができない。相乗効果が生まれた時、史上3校目のトリプルクラウンが待っている。【佐々木一郎】