<テニス:全仏オープン>◇4日目◇26日◇パリ・ローランギャロス◇男女シングルス2回戦ほか

 世界72位のクルム伊達公子(39=エステティックTBC)が世界を驚かせた。25日に女子シングルス1回戦で09年度準優勝で世界9位のサフィナ(24=ロシア)を下し、現役復帰後、4大大会初勝利を挙げたことに、現地メディアも大騒ぎ。レキップ紙が「ほぼ2倍の年齢差をひっくり返した」と絶賛すれば、ロイター通信は「おとぎ話のような勝利」と驚きの声を上げた。クルム伊達は27日以降予定の2回戦で、同107位のグロス(オーストラリア)と対戦する。V・ウィリアムズ(米国)らが3回戦に進んだ。

 96年ウィンブルドンでベスト4に入った時と同じように、多くの報道陣が会見に詰めかけた。当時と違ったのは、屈託なく英語で答えるクルム伊達の姿だった。「最悪のコンディションだったけど、最後まであきらめたくなかった」。5月に肉離れを起こした右ふくらはぎには、痛々しいテーピングがされていた。

 日本では大々的に報じられたクルム伊達の現役復帰だが、実は海外では、それほど知られていなかった。フランスでも同様で、報道陣は興味津々。「なぜ復帰したのか」「引退した後は何をやっていたのか」などの質問が矢継ぎ早に飛んだ。クルム伊達は「彼(夫のミヒャエル・クルム氏)がいたから。いつも彼が、もう1度テニスをやったらと強く勧めたから」など、ゆっくりと答えた。

 それにしても何という“アラフォー”だろう。最終セットは足にけいれんが襲い、1-4の劣勢からひっくり返した。「アドレナリンだけが頼みでした。棄権しようかとも考えたが、去年の(予選の)棄権の印象が強くてとにかく戦い抜きたいという気持ちが強かった」。39歳7カ月は、大会の女子シングルスでは85年バージニア・ウェード(英国)の39歳10カ月に次ぐ年長の勝利。トップ10を破った選手としては、ツアー史上最年長となる。

 しかし、その代償は大きい。足の状態は最悪で「検査を受けて、医師やコーチと相談する」。それでも「できれば続けたい」と2回戦に意欲を見せた。女子ツアーのHPではクルム伊達の勝利をトップに報じた。そのタイトルは「いつまでも若い」だった。