<バドミントン:ヨネックス・オープン・ジャパン>◇2日目◇22日◇東京体育館◇男子シングルス1回戦

 日本男子界の苦労人が、金星で12年ロンドン五輪に向け猛アピールだ。世界34位の佐々木翔(28=トナミ運輸)が、同4位でアテネ五輪金メダルのタウフィク・ヒダヤト(29)に第2ゲーム、マッチポイントを奪われながら、18-21、23-21、21-19の逆転勝ちで2回戦進出を決めた。常に日本男子の第一線で活躍しながら、五輪に縁がなかった男が、ロンドン五輪代表に名乗りを上げた。

 会場に佐々木の雄たけびが響き渡った。「ヨッシャー」。66分の熱戦に、最後はスマッシュで、ヒダヤトを粉砕した。「勝った実感がまだわかない。いいプレーを見てもらえてうれしい」。アテネ金、今年の世界選手権銀メダルの世界の超トップ級を下した瞬間だ。

 第2、最終ゲームともに、終盤の接戦を、深く押し込むサーブとネット際に落とす短いサーブの切り替えで制した。「組み立てがうまくいった」。「スマッシュが武器」と強打一辺倒だった時期から脱却し、プレーの幅が広がったのが金星につながった。

 07年にプロ野球の清原和博氏も師事したケビン山崎トレーナーのもとで、パワー重視の肉体改造に取り組んだ。同年全日本で初優勝。しかし、北京五輪、今年の世界選手権の代表を逃し、壁を実感した。「スピードが必要だと痛感した」。体重を落とし、今年の夏は所属の合宿で体をいじめ抜いた。

 丸刈りで、風ぼうはまるで修行僧だ。バドミントンに対してもストイックそのもの。昨年の全日本社会人準決勝では「スマッシュを封印してみた」と、彼なりのこだわりで敗れた。愛読書は剣豪宮本武蔵の「五輪書」。2度の代表落ちを経験した男が、五輪出場最後のチャンスをロンドンにかける。【吉松忠弘】