競泳男子平泳ぎの北島康介(28=日本コカ・コーラ)が、左足付け根の肉離れで全治2~3週間となった。日本水泳連盟は12日、都内で世界選手権(7月16~31日、中国・上海)の日本代表選手22人を発表し、北島が前日のレースで故障していたことを明かした。通常は陸上選手などが地面を蹴る反作用から起こすケガで、競泳選手としては極めて異例。強い力で水をとらえる「超人」ぶりが裏目となった。代表チームは今日13日から短期のグアム合宿に出発するが、北島は国内に残り療養に努める。

 衝撃的な故障で、北島の超人ぶりが浮き彫りとなった。前日に行われた国際代表選手選考会の男子200メートル平泳ぎ。飛び込んですぐ、最初のキックの時に痛みが走ったという。一夜明け、日の丸ジャージーに身を包んだキングは、さばさばした表情で振り返った。

 北島

 飛び込んですぐバチン、ときた。痛みで9割あきらめた。うまく泳ぎながら修正し、気持ちで泳いだ。(プールから)上がらないといけないかな、と思ったけど最後まで泳ぎ切った。それよりも痛かった。

 日本代表の金岡ドクターの診断は「左長内転筋の肉離れ」で、全治2~3週間。何より競泳選手が肉離れを起こす例はほとんどない。続けて「普通は陸上選手やサッカー選手が地面を蹴る反作用で起きるケガ。水中の競泳選手ではまず聞かない。それだけ水を強い力でとらえている」と説明した。しかも2分9秒26の好タイムだ。冨田との激戦に体中にアドレナリンが充満したとはいえ、ケガの度合いからすれば、まさに超人。日本代表の平井ヘッドコーチも「まさかケガをしているとは思わなかった。途中からいい泳ぎをしていた」と話すほどだった。

 実は4年前にも、北島は世界選手権の3週間前に同じ左太もも付け根の肉離れを起こしている。それでも100メートル、200メートルを圧勝し、2冠に輝いた。当時を知る平井ヘッドコーチは「康介はケガがあるともう1回大きく伸びるタイプ。まだ進化する過程にあるのかな」。心身の充実ぶりが招いたアクシデントとの認識を示した。

 今日13日からのグアム合宿には参加せず療養。その後は日本でトレーニングを続け、来月のジャパンオープンに出場する予定だ。故障にも「世界選手権は(07年以来)久しぶりなんで、楽しみ」と言う北島。災い転じて福となす、とばかりに世界の頂点をにらんだ。【佐藤隆志】