<世界体操>◇4日目◇10日◇東京体育館

 全員が代表入りしている田中3きょうだいの長女理恵(24=日体大大学院)が、家族に今大会初のメダルをもたらす。女子団体予選を5位で通過した日本は10日、決勝を想定した実戦形式の練習を行った。今日11日の決勝で66年ドルトムント大会以来45年ぶりのメダルに挑む。3種目に出場する田中理は、前日の男子団体予選で脳振とうを起こした弟佑典、ミスが出た兄和仁の悔しさを、メダル獲得で晴らす。

 理恵の笑顔の下には、秘めた激しい思いがある。最大の目標だった12年ロンドン五輪の出場権は獲得した。しかし、それで終わるつもりはない。「(出場権取って)はい、これで終わりとは思っていない。5位以上を狙いたい」。メダルがしっかりと、視野に入っていた。

 決勝は平均台のメンバーから外れた。予選で演技した5人のうち、最低の13・600点だった。しかし、残り3種目では得点源として期待されている。特に跳馬は最終演技者の3人目。「3番目がミスをしたらダメ。しっかりと跳びたい」。この日も、細かい修正点をチェックした。

 笑顔だった表情が、少し曇ったのは、弟の話になった時だ。団体予選の床運動で頭を打ち、軽い脳振とうを起こした佑典を前日、応援席で見ていた。ただ「まずは(自分の)試合のことしか考えていない」と気丈に振る舞った。心配でないはずがない。自分に集中することで、その思いを振り払っているようだった。

 アイドル的な扱いには戸惑うこともある。「わたしは、昔と変わらない」。人一倍、陰で努力している。代表合宿でも、練習には誰よりも早く来る。現在、日体大大学院2年生。修士論文は体操がテーマだ。大会が終わるごとにリポートを担当教授に提出。論文を書く練習を重ねている。

 予選は5人が演技し上位4人の合計点だったが、決勝は3人だけが演技し、その合計点で競う。1人のミスも許されない。兄や弟、そしてチームのために「予選の時のような雰囲気で頑張りたい」と、自らを奮い立たせた。【吉松忠弘】