<フィギュアスケート:全日本選手権>◇25日◇大阪なみはやドーム◇女子フリー

 浅田真央(21=中京大)が、来年3月の世界選手権(フランス・ニース)で、完璧なトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に挑む。フィギュアの殿堂入りをした名伯楽、佐藤信夫氏(69)に昨季から指導を受け、スケーティング技術を基礎から見直した。今季は、こだわり続けた3回転半を封印してきたが、世界選手権の代表が決まり「(世界選手権の)フリーで完璧な『愛の夢』を演じたい」と、3回転半復活を誓った。2位の鈴木明子(26)、3位の村上佳菜子(17)も代表に決まった。

 浅田にトリプルアクセルが戻ってきた。この日の朝の公式練習で、3回転半は今季最高の出来だった。4回跳んで、3回、きれいに着氷。演技前の6分間練習でも1度跳び、完璧に着氷した。佐藤コーチも「今シーズンの中で最も良かった。だから、厄介なことになるかも」と苦笑。佐藤コーチの心配通りに、演技前、浅田は3回転半を主張したという。しかし何とかなだめ、2回転半に収めた。

 本人も手応えを感じ始めている。11月のGP初戦、NHK杯では「回転が、まったく足りないことから始まった」。続く優勝を飾ったGP2戦のロシア杯では「ちょっと回ってきた」。そして、ここに来て「朝から回転が回るようになってきてびっくりした」。練習でも完璧な3回転半を跳んでいるということで「次には絶対に決めたい」と、ようやく3回転半復活へ意欲を示した。

 昨季から、佐藤コーチは、3回転半の改良に取り組んだ。浅田は、上下にジャンプする癖があった。これでは、着氷から次の動作になかなかスムーズに移れない。氷の表面と平行に、線を描くように流れるようなジャンプに変えることを目指し、ようやく今季、完成に近づいた。

 それと同時に、佐藤コーチは浅田との信頼も築き上げた。3回転半を跳ぶことにこだわる浅田の心を少しずつ解きほぐした。今大会は「何も言わなくても考えは分かっている」と佐藤コーチが言うほど、浅田の信頼は深まった。SPでは、相談することなく3回転半を自ら封印した。

 その間、佐藤コーチが「こつこつとまじめに練習することに、頭が下がる」と話すほど、完璧な3回転半を作り上げるために地味な練習に取り組んだ。そして、来年の世界選手権では、新たな3回転半がデビューする可能性が高い。

 フリーの「愛の夢」は「まだ完璧に演じたことがない」。この日も、3回転半を2回転半にしたことに加え、最後の3回転ループが2回転になった。フリーの1位は鈴木に奪われた。「まだ、これが終わりじゃない。(世界選手権では)完璧に跳びたい」。そして、それが世界女王復活への大きな鍵を握っている。