ツルツル水着でロンドン切符だ-。五輪出場をかけた水球のアジア選手権は24日、千葉国際総合水泳場で開幕した。今日25日に初戦を迎える日本の男女は、ウレタンラミネート素材を用いた表面が滑りやすい水着を着用。特に体を覆う面積が多い女子は、腰と脇に同素材を使用。水面下でのつかみ合いが勝敗を左右する「水中の格闘技」を、つかみにくい新水着で制する。女子は五輪初出場を、男子は84年ロサンゼルス大会以来28年ぶりの出場を目指す。

 試合前日練習で勢いよくシュートを打ち込む女子代表が着ていたのは、2色に分かれた特製水着だった。白と紺。体格で勝る中国、カザフスタン対策の秘密兵器。攻撃の中心選手の中野は「持たれないようにツルツルとした素材の物を用意してもらいました」と満足げにうなずいた。

 白い部分はラミネート加工されたウレタンだ。水着といえば、思い出すのは08年の北京五輪。英スピード社の高速水着「レーザー・レーサー」が話題をさらったが、その素材がウレタンだった。締め付け力が非常に強く、体の筋肉の凹凸を減らし水の抵抗を減らして好タイムを生んだ。だがその後は競泳では使用禁止に。その素材が水球では武器になった。

 開発したのはミズノ。紺部分は編み物素材だが、脇、腰の白い部分にウレタンを使用した。担当のスイム&フィットネスマーケティング部の吉井宏見氏(47)は「紺部分は動きやすさ重視で伸びる素材で一部がウレタンです。密着するのでつかまれにくい」と説明した。男子も一緒に、今大会から新作を投入した。

 この日、中国がカザフスタンに21-8で圧勝した。中心選手は身長180センチと大柄。得点場面でもつかみ合いで有利なポジションを奪う場面が目立った。11年世界選手権2位の強豪で、前評判では1位が得る五輪出場が絶対視されている。

 だが、日本には地の利、そして何より勝負水着もある。昨年12月の合宿では強豪の花咲徳栄高レスリング部の顧問を招き、つかみ合いをいなす特別講義も受けた。今日の初戦カザフスタン戦に勝ち、まずは中国への挑戦権をつかむ。得点の期待がかかる中野は「出るからにはチャンスはある」と言い切った。【阿部健吾】

 ◆水球男女代表のロンドンへの道

 男女ともアジア選手権(24~27日)の1位が出場権を獲得する。男子は4カ国(日本、カザフスタン、中国、クウェート)が総当たり戦、女子は3カ国(日本、カザフスタン、中国)が総当たり戦で対戦する。男子は2、3位は4月の世界最終予選(カナダ)、女子は2位に同月の世界最終予選(イタリア)に回る権利があるが、男女とも勝機がないとみて参加しない。本大会は12カ国が参加、7月28日~8月12日まで行われる。