<競泳:全国JOCジュニアオリンピックカップ夏季大会>◇4日目◇29日◇東京辰巳国際水泳場ほか

 16年リオの星・山口観弘(17=鹿児島・志布志DC)がまた、五輪表彰台の「2分7秒台」を記録した。前夜に米ハワイから帰国したばかりの強行軍の中、決勝で2分7秒57をマーク。インターハイの自己記録(2分7秒84)を塗り替えた。ロンドン五輪銅メダルの立石諒の記録を大きく上回り、北島康介の持つ日本記録(2分7秒51)に0秒06と迫った。来月13日から始まる国体(岐阜)では、ダニエル・ジュルタ(ハンガリー)の持つ世界記録(2分7秒28)に挑戦する。

 山口の泳ぎに会場がどよめいた。最初の50メートルを29秒36で突っ込む。勢いは止まらない。ひとかきごとに大きく伸びる泳ぎで、2位以下に大差をつける。100メートルを1分2秒19、150メートルを1分35秒21で通過。そしてラスト50メートルで真骨頂の粘りを披露し、五輪選手の誰よりも速い、圧巻の32秒36締めだ。掲示された記録は2分7秒57。プールサイドで見守った日本代表の平井伯昌ヘッドコーチは歓喜のあまり、大きく手をたたき、喜びをあらわにした。

 周囲の興奮とは別に、山口はいたって冷静だった。「正直、昨日の夜に帰国したばかりで体が重かった。ちょっと弱気になって、記録よりも安定したタイムが出ればいいなと思っていました」。泳いだ本人もびっくりの、衝撃的なタイムだった。前日までジュニア・パンパシフィック選手権のため、米ハワイ州ホノルルに滞在。帰国したのはレース前夜11時だった「1時に寝たけど、時差ぼけで4時に目が覚めた。睡眠時間は3時間」。出場するかどうかも微妙な状況だったが、五輪後も泳ぎ続ける同年代の萩野の姿に「疲れたなんて言ってられない」。自らの体にムチを入れた。

 本職は200メートル。17日のインターハイで2分7秒84の「五輪銅」記録をたたき出すと、続く26日のジュニア・パンパシフィックでは、踏み切り板のない旧型スタート台に外プールという悪条件下ながら2分8秒03という好記録を出した。ここまでわずか2週間。昨年冬から今春まで約4カ月間、平井コーチのもとで合宿し、泳ぎ込んだ成果が今につながっているという。「4年後は2分5秒台を出したい」。大きな夢を抱く少年は、2週間後の国体で、まずは世界記録に挑む。【佐藤隆志】