指導していた大学の女子柔道部員を合宿先のホテルで乱暴したとして、準強姦(ごうかん)罪に問われたアテネ、北京両五輪の金メダリスト内柴正人被告(34)の第5回公判が28日、東京地裁(鬼沢友直裁判長)であり、弁護側の被告人質問が行われた。内柴被告は「部員が寝ていたときに性行為をしたというのは事実ではない」と述べ、あらためて同意の上での行為だったと無罪を主張。部員の言葉や行動を生々しく語った。

 内柴被告が法廷で発言するのは、9月12日の初公判以来、2カ月半ぶり。証言台から立ち上がり、身ぶり手ぶりを交えて、部員も性交渉を了承していたと強調した。「事件前に部員らと入ったカラオケ店で、部員の方から抱きつかれ、キスや口淫をされて、気分が高まった」と供述。ホテルの部員の部屋へおんぶして連れ帰った後については「おんぶしたまま、一緒にベッドに腰掛ける感じ。体を回して、正面を向いて、キスをしました。部員は起きていて、行為に応じてきた」と振り返った。

 さらに、性行為をした際の部員の発言や行動にも触れた。「部員から『奥さんがいるのにいいんですか?』『他の学生ともしたんでしょ?』と言われて、じらされました。行為をしていたら、(別の女性部員の)ドアノックがあって、僕は驚いてベッドと壁の間に隠れて、部員に『いいよー』と言いました」。今月2日の第2回公判では、事件当日に別の女子部員とも性行為をしたという証言があったが、この日は自らの言葉で「別の部員とも性行為をしました」と話した。

 一方、教え子と関係を持ったことについては、「後悔して死のうと思った」と涙声になった。「パニックになって、この先どうなるのかと不安になった。自分から柔道を取ったら何も残らない」。自殺に備えて家族を実家に預けたが「妻から『死ぬな』と言われて気持ちが治まった」と明かした。

 起訴状によると、九州看護福祉大(熊本県玉名市)女子柔道部の合宿にコーチとして同行していた内柴被告は昨年9月20日未明、東京都八王子市のホテルで、酒に酔って熟睡し抵抗できない部員を乱暴したとしている。今日29日の第6回公判では、検察側の被告人質問が行われる。

 ◆内柴正人(うちしば・まさと)1978年(昭53)6月17日、熊本県合志市生まれ。9歳で柔道を始め、国士舘大卒業後、旭化成に入社。得意技はともえ投げ。04年アテネ五輪、08年北京五輪の男子66キロ級で2連覇。10年10月に現役引退。家族は妻と1男。