<テニス:ウィンブルドン選手権>◇第6日◇29日◇ロンドン・オールイングランド・クラブ

 世界11位で日本のエースの錦織圭(23=日清食品)が、自身初の16強入りを逃した。同28位のアンドレアス・セッピ(29)にセット2-1とリードしながら、6-3、2-6、7-6、1-6、4-6の3時間4分で逆転負けを喫した。昨年に続く3回戦敗退で、すべての4大大会で16強入りの快挙は、来年に持ち越しとなった。

 「エア・ケイ」が壊れた。「僕のイチ押し」と呼んでいたフォアハンドが、全く打てなくなった。ラリー戦で、最後は主導権を奪われ、反撃の力もなかった。「実力も上がってきたのに、もうちょっと勝ちたかった」。最後は、そのフォアのリターンがネット。肩を落として14番コートを去った。

 つまずきは、第2セットの第1ゲームだった。第1セットを奪い、最初の自分のサービスゲーム。「最初は大事だと分かっていた」にもかかわらず、不用意にも落とした。ジュニア時代に時々顔をのぞかせたちょっとした気の緩みが、最初の命取りとなった。

 第3セットを奪い、セット2-1とリード。しかし、すでに錦織のフォアは崩壊寸前だった。「狙われているのは分かった」。セッピの持ち球は、逆回転や回転が少ない球種だ。芝では低く滑り、錦織はフォアで何度も持ち上げるショットを打つ必要があった。

 第1セットは体力も集中力もあり、うまく処理した。しかし、時間がたつにつれ、セッピの低い球が、ボディーブローのように効いてくる。腰やひざを痛めていたこともあり、最後は「低い体勢でいられなかった」。最終セットに入る前には、腰のマッサージを受けた。疲労がたまり、最後はタイミングが狂い、音を立てて崩れた。

 4月から、長期の欧州遠征で、体も限界に来ていた。「試合前は、ひざや足首が痛くて、リタイアも考えていた」。しかし、試合は錦織が先行して進んだ。「試合中は大丈夫だった」と言うように、ケガや故障が原因より、つかまえることができた相手を、自らが逃した。

 トップ10よりも、4大大会で「常に安定してベスト8や4に入れる選手になりたい」と話していた。今大会も、まずはベスト8に目標を置いた。しかし、芝を克服するには、まだ高い壁がある。錦織にとって、久々に考えさせられる痛い敗戦となった。