<テニス:全米オープン>◇第4日◇29日◇ニューヨーク・ナショナルテニスセンター◇女子シングルス2回戦

 予選勝者で世界109位の奈良くるみ(21=大産大)が、金星で3回戦進出を決めた。同22位で第19シードのソラナ・チルステア(23)に7-5、6-1の1時間24分でストレート勝ち。日本女子としては08年杉山愛以来の大会3回戦進出となった。この勝利で初の世界100位以内を確定させた。

 158センチの小柄な体が何度もコート上で跳ねた。最高の笑顔がはじけると、「カモーン!」の歓喜の声が、周辺に響き渡った。「本当に今回もいい試合ができてうれしい」。予選3試合に本戦2試合で、1セットも落とさない5連勝。それも金星での32強入りだ。

 第1セット3-0とリード後、3オールに追いつかれた。自分のサーブで0-30。上位選手にリードを許せば、一気に突き放される。「やるべきことをやって、最初のプレーを立て直そう」と気持ちを切り替え、乗り切った。最後まで1度もリードを許さずストレート勝ちを収めた。

 15歳で18歳以下の全日本ジュニアを制し、国内の各年代のタイトルを女子として初めて総なめ。17歳でプロに転向し、一般の全日本でも優勝した。その後、右足首捻挫などケガで低迷。10年に101位にまでなった世界ランクも200位以下まで転落した。この勝利で初めてトップ100入り確定。「ずっと100位を切ると言ってきたので、それが一番うれしい」。前後左右に高低も交えた3次元テニスに加え、第2セットは第1サーブが入る確率とリターンの返球率が100%という驚異の安定感を誇る。

 10年ウィンブルドン以来3年ぶりの4大大会本戦で、自身初の3回戦に進出だ。「3年と聞くと長いが、長いとは感じていない。遠回りして良かったと思う」。木の実好きの父がつけた名前がくるみ。そのくるみの花がようやく開花した。【吉松忠弘】

 ◆奈良くるみ(なら・くるみ)1991年(平3)12月30日、兵庫県川西市生まれ。07年ウィンブルドンジュニアのダブルスで準優勝。09年にプロ転向。17歳で全日本に優勝した。家族は両親と弟。趣味は「阪神の応援」。158センチ、52キロ。