レスリングが生き残った!

 国際オリンピック委員会(IOC)は8日、ブエノスアイレスで総会を行い、20年東京大会から新たに加わる競技を決定。野球・ソフトボール、スカッシュとの争いを制し、2月の理事会で1度は中核競技を外れたレスリングが、再び採用された。16日開幕の世界選手権(ブダペスト)に向けて都内で合宿中の日本代表は、朗報を受けて会見。吉田沙保里(30=ALSOK)が東京での五輪5連覇を宣言した。

 東京・北区の味の素トレセン、女子代表と男子フリー代表、日本レスリング協会の幹部たちは、マットの上で吉報を待った。午前0時30分過ぎ、現地からの中継が「レスリング」と伝えると、選手は一斉に立ち上がって抱き合い、握手し合って歓喜を表した。「決まった瞬間はうれしくて、ホッとした」。吉田は久しぶりに最高の笑顔をみせた。

 悪夢の半年だった。2月12日、IOC理事会でレスリングが五輪の中核競技を外れた。9月の総会で復活のチャンスがあると分かると、吉田は懸命に動いた。「子どもたちの夢を残してほしい」と訴えた。20年東京五輪招致で走り回る吉田に、レスリング存続という新たな使命が加わった。

 署名活動では、先頭を切って街頭に立った。94万以上が集まった。レスリング界の「顔」として、活躍した。5月にはロシア・サンクトペテルブルクのIOC理事会で存続を訴え、レスリングが最終3候補に残ることに貢献した。ルール変更に階級変更、レスリング自体が変わったことが、この日の勝利につながった。

 「これで、東京を目指して頑張れる。国民に生で見てもらえるのはうれしい。もちろん、金メダルを」。吉田は笑顔で言った。3年後のリオで五輪4連覇、東京で5連覇。その前に、目指すのは世界選手権での世界14連覇を狙う。「9月は3つ勝負があった。2つ(五輪招致と五輪残留)は勝った。あとは残る1つに勝つだけ」。晴れやかな表情で、吉田は言い切った。【荻島弘一】