<スピードスケート:ソチ五輪代表選考競技会>◇第1日◇27日◇長野・エムウエーブ◇女子1500メートル

 39歳の田畑真紀(ダイチ)が1分59秒05で優勝し、日本スピードスケート史上最年長でのソチ五輪出場を確実にした。94年リレハンメルから計5度目の大舞台。10年バンクーバー後は、自転車競技に転向。昨季から2年ぶりにスケートに復帰すると、今季は国内ベストを更新と年齢の限界を超えた進化を見せていた。ソチ五輪ではアラフォー世代に勇気を与える滑りを見せる。

 ただの優勝で喜ぶことはない。たとえ五輪代表選考会でも。レース後、開口一番に田畑は言った。「狙ったタイムが全然出せず、悔しい。タイムを見て、すごく情けなくなった」。5度目の五輪を確実にしても、設定タイムより1秒以上遅かった自分を許せない。無限の向上心が、39歳の強さだった。

 レース前から年下のライバルたちをのみ込む。6度目の五輪選考会。「みんながガチガチに見えた。頭は冷静で、ハートは熱く」と言い聞かせた。ラスト1周こそ疲労は隠せなかったが、そこまでは理想的なレースを展開。一回り以上も年下の選手たちに完勝した。

 「年齢を考えたことはない」。10月の全日本距離別では1分58秒46の国内最高をマークし、自らの進化を証明。陸トレでは若手より本数こそ少なくするが、200段の階段上り、800メートルの登坂走では若手に負けず、自己記録を更新する。元日本代表ドクターの高尾良英氏(65)は「今でも成長している。限界が見えない」と驚く。

 バンクーバー後は自転車競技に挑戦した。ロンドン五輪出場こそ逃したが、スケートでのスタミナを強化した。今オフには競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチ(50)のもとを訪れ、アドバイスを受けた。最近は40歳イチローのドキュメントを見て「常に最高のコンディションを保つ」姿勢に共感し、ケアと休養の重要さを再認識。好奇心旺盛で貪欲な姿勢も、39歳の肉体を支えている。

 現段階でスピードスケート史上最年長出場が確実になる。「同世代の人たちに、まだ頑張れるところを見せたい」と、ソチではアラフォー世代に勇気を与える決意は強い。高校2年時から指導するダイチの羽田雅樹監督(52)は「あと10年くらいやるんじゃない。東京五輪も狙うのでは」と笑った。39歳の鉄人ぶりに、その言葉はジョークに聞こえなかった。【田口潤】

 ◆田畑真紀(たばた・まき)1974年(昭49)11月9日、北海道むかわ町生まれ。鵡川中、駒大苫小牧高を経て93年に富士急入社。03年に退社すると、04年5月にダイチ入社。00年世界選手権で総合3位。01年、03年世界距離別1500メートル銀メダル。五輪は94年リレハンメル、02年ソルトレークシティー、06年トリノ、10年バンクーバー五輪出場。バンクーバーでは団体追い抜き銀メダル。1500、3000メートルの日本記録保持者。家族は両親と姉、妹。162センチ。

 ◆冬季五輪最多出場および最年長出場

 日本では葛西の6度出場が最多。田畑が確実にした5度は、ジャンプ原田雅彦、スピードスケート岡崎朋美、モーグル里谷多英がいる。国際オリンピック委員会の資料によると世界では男女ともに6度が最多。夏季五輪を含めると、日本ではスピードスケートと自転車で出場した橋本聖子の7度が最多。日本人の最年長代表は、10年バンクーバー五輪に45歳で出場したスケルトン男子の越和宏。田畑の39歳はスケートで最年長も、今日28日に女子500メートルで岡崎がソチ切符をつかむと、42歳で記録更新となる。世界では24年シャモニー五輪カーリングで銀のクロンルンド(スウェーデン)が59歳61日で史上最年長メダリスト。