<卓球:JA全農世界選手権団体戦>◇第6日◇3日◇東京・代々木第1体育館ほか◇男女決勝トーナメント

 日本のエース石川佳純(21=全農)が、約4時間にわたる激戦に終止符を打ち、日本女子に2大会ぶりのメダルをもたらした。女子で団体世界ランキング3位の日本は、石川が第2試合で敗れる危機に直面したが、最終試合で再び登場した石川がフルゲームの3-2と勝ち、準決勝進出を決めた。3位決定戦がないため銅メダル以上が確定。今日4日、31年ぶりの決勝進出を懸けて同4位の香港と対戦する。

 涙の逆転劇だった。最終試合。緊張で体が動かない。しかし、メダルを目前にして絶対に負けられない。石川は最終ゲーム、1-4から逆転勝ちした。「負けたと思った。でも、皆が回してくれた5試合目。絶対にあきらめないと誓った」。勝利の瞬間、歯を食いしばったが涙があふれた。

 第1試合で平野が勝ち、最高の流れでバトンが回ってきた。相手は中国から国籍変更したリー・ジャオ。石川の約2倍の41歳ながら、世界13位と自己最高世界ランクを更新する卓球界の“レジェンド”だ。

 石川は、過去1勝2敗と苦手とするが、最終ゲームを7-2とリード。勝利は目前だった。だが、リーの切れ味鋭いバックと精神力に追い上げられ、まさかの逆転負け。「対戦の準備をしてきたのに勝てなかった。本当に悔しい」。その思いを最終試合にぶつけた。

 12年ドルトムント大会でメダルを逃した悔しさが石川を支えた。準々決勝の韓国戦。2-2からの最終試合で石川に回り、最終ゲーム12-14の大接戦で敗れた。「世界選手権の借りは世界選手権でしか返せない」。この日のため、男子に交じって練習を続けてきた。

 2年前と似た状況で、結果を出した。「2年前なら、また負けていたと思う。最後は自分との闘いだった」。福原が欠場し、ただ1人のエースとして重責を担った。地元開催で、大会の冠も自分の所属企業。「プレッシャーはあった」と話すが、精神的に成長した自分を見せるためにも、負けるわけにはいかなかった。

 これで次戦の香港に勝てば、31年ぶりに銀メダル以上が決まる。村上恭和監督は「今日の試合で肝を冷やしたことで、今度はいい試合ができる」と、敗れてもエースへの絶対的な信頼は揺るがない。香港戦では、その期待に石川が見事に応えてみせる。【吉松忠弘】