<テニス:全米オープン>◇最終日◇8日◇米ニューヨーク・ナショナルテニスセンター◇男子シングルス決勝

 テニスの全米オープン男子シングルスで、錦織圭(24)が準優勝を果たした。日本テニス協会の松岡修造強化副本部長(46)は9日、幼少時から知る錦織の健闘をたたえた。ジュニア選手を指導する合宿「修造チャレンジ」を開催中の神奈川・藤沢市のスポーツセンターで心境を吐露。準優勝を悔やみながらも、「ビッグ4」時代の終わりと、近い将来の錦織のグランドスラム優勝を予言した。

 「一言で言えば、悔しい」。日本人初の準優勝にも、松岡氏の表情は悔しさでにじんでいた。「チリッチは人生で最高のテニスをした。それでも、圭なら勝てたと思う」と、かみしめるように続けた。「緊張していたし、過去の対戦成績がいいチリッチだからこそ勝ちを意識してしまった。それがいいプレーをぶらせてしまった」と唇をかんだ。

 11歳の時から錦織にテニスを教えた松岡氏は、今大会での愛弟子の体力と精神力の成長を実感し、さらなる飛躍を確信した。「ジュニアの時は体も強くないし、表現力も最もなかった。そこをクリアしてくれたのがうれしかった」と指摘。「4時間以上の試合を2つもこなした。弱点と言われた2つを一気にトップに押し上げたことが一番大きかった。世界NO・1に近づいた」と絶賛した。

 さらに松岡氏は、今大会を機にテニス界に新たな時代がくると明言した。「勢力図はすぐに変わる。ビッグ4(ジョコビッチ、フェデラー、ナダル、マリー)はこれから落ちていく。拾ってラリーを続けるテニスはもう通用しない。スピーディーになり、速い展開やタイミングでポイントするようになった」。そして、錦織が新時代の中心になることを確信する。「それが一番できるのが圭だ。100%を出せれば、誰にでも勝てる。圭は間違いなくグランドスラムで優勝する」と言い切った。

 「錦織にどんな言葉をかけたいか?」と聞かれると松岡氏は「11歳の圭を思い出した。ありがとうという言葉しかない。これだけの勇気をくれた」と話した。だが、その目には光るものが…。「だからこそ言いたい。もっと強くなれ。絶対勝て。決勝で負けたことが、圭の一番の力だぞ」。あと1歩だった頂点に向かって、熱血指導が冷めることは到底ない。【岡崎悠利】

 ◆松岡修造(まつおか・しゅうぞう)1967年(昭42)11月6日生まれ。東京都出身。現役時代の4大大会での最高成績はウィンブルドン8強。世界ランクの自己最高はシングルス46位、ダブルス95位。現在は指導者として毎年十数人の男子トップジュニア選手を育成する「修造チャレンジ」を開催している。錦織も01年に参加した。188センチ、85キロ。

 ◆ビッグ4

 00年代後半のフェデラー、ナダル「2強時代」に、ジョコビッチとマリーが加わり、ここ5年ほどは「ビッグ4」と呼ばれている。最近10年間の4大大会決勝は、ほぼ4人が独占。チリッチと錦織の今大会決勝は、05年全豪のサフィン、ヒューイット以来39大会ぶりの「ビッグ4抜き」の決勝だった。今大会まで10年間、4大大会40回のうち36回を4人が制覇(ナダル14回、フェデラー13回、ジョコビッチ7回、マリー2回)。他の選手の入り込む余地が、ほとんどなかった。