<フィギュアスケート:全日本選手権>◇第2日◇27日◇長野・ビッグハット

 ソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20=ANA)が3連覇を達成した。ショートプログラム(SP)1位から、フリーも192・50点の1位で合計286・86点。後続を約35点も突き放す圧勝劇だった。疲労による体調不良の中、2種類の4回転ジャンプをそれぞれの考え方で修正。転倒もあったが、体力的にきつい状況で演技をまとめきった。来年3月の世界選手権(中国・上海)では2連覇に挑む。

 いつも以上の息切れ、いつも以上の汗の量だった。演技終了後5分以上たって取材エリアに現れた羽生は、まだ激しく呼吸をしていた。「今日は体調が良くなかった。(2週間前のGP)ファイナルの後の疲労が抜けきらなかった」。11月の中国杯での激突事故の後でさえ体調面の言い訳はしなかったが、この日は素直に苦境を明かした。8週間で4試合目。蓄積疲労と闘い、生き残った。「ミスを最小限にとどめられた」と胸をなで下ろした。

 午前の練習、演技前の6分間練習と4回転ジャンプは乱れ続けた。サルコーは回りきらない状態。案の定、演技冒頭の一発は着地の右足が踏ん張れず、転倒した。ただ、あと1歩のところまで持ってきた。修正点を求め続け、「跳ぶためのフォームでなく、フォームのためのフォームになっていた」と結論づけ、改善に向かったという。

 昨春に早大人間科学部通信教育課程に入学し、通信教育を受ける。「物事を考える新たな視点を身に付けられている」と話す。生態心理学などの身体関連以外に、コンピューターのプログラミングなども学ぶ。「こういう風に計算して、どこがエラーが起きたのかと、考え方1つ1つが競技に生きている」。1つのジャンプでも多角的に問題点を追求できるようになった。

 だからこそ、サルコーの失敗後のトーループは成功できた。「さっきの考えと矛盾するようですけど」と、今度は深く考えないようにした。今季は3分の3で成功し、「決めている自信があった」とあえて悩まなかった。2つのジャンプでそれぞれ別の思考法を用いて、苦しい体力の中でも結果を出した。

 中盤以降はスピンでよろけ、ステップでも鋭さがなく、昨季のような勢いはなかった。中国杯から練習時間も十分ではなく、その中で3連覇にこぎつけた。「疲れた~。やっと年が終わる」と感慨深げに話し、前を向いた。

 羽生

 壁を乗り越えたら次の壁しかなかった。でも、人間はそういう風に課題を克服したら次の課題にいくのかな。僕は人一倍、欲張りなんだろうな。

 体調を考えて演技構成を下げてきたが、15年は後半に4回転ジャンプを組み込んでいく。どんな考えを基に、どんな新たな演技を見せるのか。自分でも楽しむように、汗をぬぐいながら目を細めた。【阿部健吾】

 ◆全日本選手権男子3連覇以上

 10連覇佐藤信夫(1957~66年)

 5連覇佐野稔(72~76年)

 4連覇有坂隆祐(40~48年)小川勝(84~87年)

 3連覇小塚嗣彦(66~68年)樋口豊(69~71年)五十嵐文男(79~81年)鍵山正和(91~93年)高橋大輔(05~07年)羽生結弦(12~14年)。