大相撲初場所(10日初日、東京・両国国技館)の横綱審議委員会(横審)けいこ総見が5日、両国国技館で行われた。女性初の委員で、1月末で任期満了となる内館牧子委員(61=脚本家)にとっては最後のけいこ総見。横綱白鵬(24=宮城野)が29番取るなど活気に満ちた内容には満足したが、横綱朝青龍(29=高砂)には相変わらず辛口だった。日ごろからお騒がせ横綱の「品格」を批判してきた同委員は、場所中の観戦も予告。朝青龍と「天敵」とのラストバトルが、いよいよ始まった。

 午前9時42分、ついに“最終決戦”の軍配が返った。けいこ場に現れた朝青龍は、まずは内館氏の前を素通りする。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)に一礼し、同氏に背を向けてしこを踏む。すり足しながらチラリ。土俵に入る前にチラリ…。気になる「天敵」に視線を送ったが、最後まで2人の目は合わなかった。

 朝青龍

 ボチボチじゃないですか。動きは悪くないけど、体のバランスが取れてない。反応良くないね。

 ライバルたちに7勝5敗。昨年本割で1度も勝てなかった白鵬には2敗した。土俵脇ではなをかみ、うがいをし、体調不良をアピールしながら、荒い鼻息が響く。総見全体には「白熱して良かった」と合格点を与えた内館氏に、つけいるスキを与えてしまった。

 内館氏

 朝青龍は激しい相撲を見せてましたけど、スタミナが心配。一番取って休んだり。番数もねえ。

 00年9月に初の女性委員となった内館氏は、1月末で任期を終える。この日は朝青龍と会話なし。だが、舌鋒(ぜっぽう)鋭く攻め立ててきた愛情がある。いちずな「彼」に対する言葉には、自然と力が入った。

 内館氏

 朝青龍はプロスポーツ選手としては「超」が3つつくぐらい一流。でも横綱としては認めません。相撲道の道を外すことが多いですからね。決して憎いわけじゃないですよ。ここで力が落ちるのはもったいない。青と白の時代をつくってほしいのです。

 内館氏の100メートル先で、朝青龍は笑顔だった。「これからも末永くお幸せに過ごしてください。僕はもう少し頑張りますので、アウトサイドからよろしくお願いします」。先に“引退濃厚”な「天敵」に勝ち誇ったようなエールを送った。

 内館氏は「最後は白いベンツで迎えに来てもらおうかしら」と、前日4日に朝青龍が3000万円以上の白リムジンで「お迎えする」と言ったことをチクリ。「『辛口コメントは勉強になる』と言ってるみたいだけど、勉強というのは実行に移してから言ってほしい」と話すなど、常に言動には目を光らせている。退任まで残り1カ月。「今場所はできる限り行きます」と、場所中も熱い視線を送り続ける。【近間康隆】