名門二所ノ関一門が分裂した。19日、都内で開かれた一門会で「貴乃花派」6人が離脱。理事選で投票権を持つ評議員が29人から22人に減少した。優勝32回の大鵬ら、数々の名横綱、名大関を輩出、理事枠3枠で出羽海一門と並ぶ最大勢力だったが、事実上崩壊した。貴乃花派の離脱によって、現職の放駒親方(61=元大関魁傑)二所ノ関親方(61=元関脇金剛)の擁立を決め、立候補予定だった鳴戸親方(57=元横綱隆の里)が辞退した。

 「貴乃花派」離脱で、二所ノ関一門が理事枠を1つ、手放さざるを得なくなった。一門で投票権を持つ評議員は22人と、当選ラインの10票前後に届くのは2人。候補3人が別テーブルで話し合って決め、投票権を持つ大関琴光喜を除く出席した21人の総意で両候補に投票することを確認した。

 3人は即席の会見席で、今回の経緯を説明した。

 放駒親方

 7人が出て行ったことが残念。慣例で候補が多くなれば話し合いで絞る。貴乃花親方は話し合いは別にして出たいということで、入ってくれなかった。離脱は彼の意見を100%尊重したから。鳴戸親方が先輩を立ててくれた。

 二所ノ関親方

 一門で理事が3人になったのは10年前。当初は2人だったことをみんなに説明した。(貴乃花派離脱は)1つの船が2つの方向だと沈没する。

 会合ではまず、全員が今回の騒動の決着方法で意見を言った。「違う方向を向いているなら結論を出さないといけない」(尾車親方)などの意見が出て、すでに離脱表明した貴乃花親方に投票する親方が一門にとどまっていいかどうかの決まで取った。その結果が「NO」。6人が離脱した。決で貴乃花派に手を挙げた親方がいたことには「勘違いしたということだった」(放駒親方)と説明した。

 この決を貴乃花派が「破門」と受け取っていることについては「(出て行くという)意思を尊重したわけで処分ではない」(放駒親方)「言葉のあや。本人の主観の問題だ」(二所ノ関親方)と否定した。

 今回の分裂で一門の勢力が弱まった。「いい力士がでて勢力を伸ばす。減ったり増えたりは仕方ない」(放駒親方)と静観するが、大鵬はじめ10人の横綱を生み、角界に君臨した一門が、一代年寄貴乃花の行動を止められなかったことは、組織の衰退を意味する。

 今後、一門という枠にとらわれない若い世代の親方が増え、どの一門にも今回のような事態が起こり得る。将来的な貴乃花派の一門復帰について、放駒親方は「覆水盆に返らずということわざもある」と、後戻りできない亀裂になったことを認めた。【赤坂厚】