<ピンポン・ニッポン>

 混合ダブルスの田勢邦史(27=協和発酵キリン)美貴江(29=十六銀行)組は史上初の「夫婦代表」だ。しかも、世界選手権開幕日の28日は2度目の結婚記念日。邦史は「強い気持ちを前面に出したり、僕にはないものを美貴江は持っている」と言えば、美貴江は「心の部分で常に信じられる人がいる。それが支え」。交際期間を含めて7年で1度もけんかをしたことがないという2人の息はぴたりと合っている。

 家庭では卓球の話はほとんどしない。試合前になると邦史が相手の特徴などをビデオで分析し、美貴江に伝える。「僕は最悪の時にどう対処するかを真っ先に考える。でも美貴江は常にプラス思考で、うまくいくことを考えている」(邦史)。攻撃的な卓球が身上の妻と、守備的な夫とバランスが取れ、家庭でも「もともと負けず嫌い」という勝ち気な妻を夫が受け止め、口論にはならないという。

 そんな2人のキューピッド役は福原愛だった。ともに東北地方出身で、大会などで子供のころから顔は知っていたが、会えば会釈する程度の仲。そんな2人が急接近したのは01年の中国オープンだった。最終日の夕食後、美貴江がホテルの部屋に戻るとカギがかかっていた。中では同部屋の福原が熟睡中で、ドアをたたいても起きない。途方に暮れる姿を邦史が発見し、2人はロビーで朝まで約5時間、トランプをして時間をつぶした。その間に意気投合し、間もなく交際に発展した。「愛ちゃんのおかげ」と言う邦史に、福原は「本当ですよ、寝てただけだけど」と笑う。

 左利きの邦史は、卓球をしている時だけ結婚指輪を右手薬指に付け替える。右利きの美貴江は左手のまま。何事も柔軟に対応する夫と自然体の妻という名コンビがメダル獲得に挑む。【高田文太】