オープン戦を96年以来の首位で終えた広島に、日刊スポーツ評論家の広瀬叔功氏(82)が開幕直前提言だ。

昨季まで2年連続MVPの丸佳浩外野手(29)が巨人にFA移籍、ベテランの新井貴浩氏(42)も引退したが、その穴は感じさせない。選手個々の意識の変化こそ、3連覇した経験と自信。そこで得たものを確信するためにも、開幕直後の戦いが重要となる。【取材・構成=前原淳】

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周囲は「丸の穴」「ポスト丸」などと騒いでいたけれど、広島の選手はそんなことなど気にも止めていないだろう。頭にあるのは「自分は何をすべきか」。この1点のみ。強いチームとはそういうものだ。緒方監督が示した方向へ、選手個々が役割をまっとうする集団だからこそ、3連覇を成し遂げられた。経験と自信が選手を成長させた。

丸が抜けても、田中広、菊池涼、鈴木という主力が健在だ。オープン戦でも彼らが機能した試合は得点を奪い、勝利も手にした。3人がチームの骨格を担う。それぞれが自分の役割を熟知しているだけに、たとえ誰かがミスをしてもカバーできる。今年も若い選手を引っ張ってくれるだろう。

主力が抜けて臨むシーズンだけに、オープン戦首位には意味がある。調整試合とはいえ成績が伴わなければ周囲の雑音は大きくなっていたかもしれない。何より自分たちの野球に迷いが生じる危険性もあった。例年はそれほど大きく影響しないオープン戦順位も、今年の広島には大事だったように感じる。そこで結果を得たことで「自分の野球をやれば大丈夫」という確信を得ることができたに違いない。

開幕から好スタートを切れば本当の意味で「丸の穴」という呪縛から解放されるはずだ。シーズン序盤は投手がフレッシュなだけに、守備重視で戦うべきだろう。守備の乱れからの失点、敗戦は想像以上に堪える。オープン戦最終戦に野間を先発復帰させたも首脳陣の狙いが見える。両翼だけでなく、二遊間の負担も減る。課題の打力を補って余りある好影響が期待できる。

いくら強打を擁しても、毎試合打ち勝つことはできない。計算が立てられる投手陣がいれば、戦い方は楽になる。緒方監督が言い続ける「投手を中心にした守り勝つ野球」。今年も広島野球を貫くことが、リーグ4連覇への近道となるはずだ。(日刊スポーツ評論家)

広瀬叔功氏(2017年3月27日撮影)
広瀬叔功氏(2017年3月27日撮影)