キャンプ中継を見させてもらっているが、佐藤輝は“虎のゴジラ”になれる可能性を存分に秘めている。まだ一線級の投手と当たっておらず、とらえているのはほぼ半速球だが、楽々オーバーフェンスさせるパワーは桁違い。遠くへ飛ばすことは、努力だけでは補えない天性によるところが大きい。阪神にいなかったタイプの和製大砲登場だ。球界を見ても、左では浜風をモノともしなかった松井秀喜以来の破壊力を感じる。

たぐいまれなポテンシャルがあるのだから、1軍の試合、それもスタメンで使って育てていくべきタイプだ。阪神でいえば、同じ大卒ドラフト最上位で入団した04年の鳥谷の例が分かりやすい。岡田監督は、少々調子が悪かろうが、疲れが見えていようが、左投手が来ようが、頑として鳥谷を代えなかった。「何言うとんねん。今日、明日だけを見たらあかん。いずれタイガースを背負って立つ。5年、10年先を見て使わなあかん選手や」と。鳥谷も期待に応えて看板選手に成長していくわけだが、佐藤輝についても、首脳陣は同様に覚悟を決める必要がある。

もっといえば、鳥谷は守備を武器に入った選手だが、佐藤輝は打撃を武器に入った選手だ。5年、10年先を見据えるなら、来年どうなるか分からない外国人より、少々力が劣っていても、使い続けていくべき素材。どんどん一線級や左腕と対戦させ、経験を積んで成長させていくべき素材だ。今後の実戦でもある程度結果を残せば、開幕からクリーンアップで行くぐらいでもいい。3番佐藤輝、4番大山、5番ロハスかサンズあたりなら、夢もビジョンもあって見る方も楽しい。もちろん中軸とは言わず、楽な打順からでもいい。私なら“お前となら心中できる”と覚悟を決め、開幕からスタメンで使っていく。(日刊スポーツ評論家)

◆岡田監督の鳥谷1年目起用法 04年4月2日、開幕戦の巨人戦に7番・遊撃で鳥谷を先発で起用した。前年03年のレギュラー藤本敦士を、外す判断を下した。ところが鳥谷は開幕5戦で17打数2安打の打率1割1分8厘と低迷し、6試合目からベンチへ。代わって藤本を遊撃に置いた。岡田監督は鳥谷をこの期間、代打や代走で使ったり、2軍戦と掛け持ちを命じた。5月中旬には三塁手として先発させるなど、可能性を試し続けた。鳥谷は7月の月間打率3割6分4厘と浮上に成功。1年目を101試合、2割5分1厘、3本塁打、17打点。これを足掛かりに鳥谷は、2年目の05年から13年連続で全試合出場を果たす名選手となった。