阪神は先発左腕が手薄な状況で、チェン、伊藤将の投球に注目していた。短いイニングだったため、即ローテーション入りが確定するわけではないが、結果良しで次の段階に進める内容だった。

伊藤将は真っすぐ、スライダー、チェンジアップをいい感じで投げていた。グラブをはめた右腕を大きく使うのが特徴的で、真上から振り下ろし、角度をつけている。高い位置にグラブを上げて、その位置に今後は左腕を引っ張ってくるイメージだ。水平に前に出るのではなく、てんびんのように上下動で投げる。マウンドには傾斜があるのでは、それはいいと思う。

投球フォームで気になる点もあった。右膝を着地させた際に、捕手に早く向きすぎだ。これがもう少し一塁側を向けば、体重移動がうまくできる。下半身に粘りが出て、ボールに強いスピンがかかる。これはじっくりと修正していけばいい。またヤクルト村上に対し、簡単に2ストライクに追い込んだが、その後の3球はすべてゾーンで勝負した。ストライクからボールになる球などゾーンを広く使ったほうがいい。反省点はあるが、球そのものはいいので、実戦を重ねていけばいい。後はイニングを伸ばした時にどれだけ投げられるかだ。

チェンは中日時代のスピードはないが、懐を突く真っすぐに、変化球をコンビネーションよく投げ分ける技術は持っている。この日の投球を見ても、現時点で心配する点はない。開幕に向けては、離脱中の西勇の状態を見ながら、この日登板したガンケルを含めた3人をどう回していくかが基本になる。とはいえチェン、伊藤将は未知数なので、備えとして岩貞も2軍戦で球数を投げさせるなど、先発としての備えも必要だ。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルトの攻撃から登板する伊藤将(撮影・河田真司)
ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルトの攻撃から登板する伊藤将(撮影・河田真司)