東京オリンピック(五輪)の日本代表候補に挙がる中日大野雄、オリックス山本の投げ合いは両投手の能力の高さを証明する投手戦だった。結果を見れば、大野雄が6回2失点で、7回1失点だった山本が投げ勝ったが、今の日本を代表する投手のすごみが、投球内容に表れた。

山本は見ていて、安心できる投球だった。真っすぐの速さ、コントロールも抜群な上に、カーブが非常にいいアクセントだった。この日の最速は156キロでフォークも140キロ台後半を計測。速いボールを意識させながら、1回1死二塁の福田、4回2死三塁の阿部はともに最後はカーブで空を切らせた。

ギアの上げ方もうまかった。1回、4回、7回と得点圏に走者を背負ったが、球数を使いながら、要所を締めた。日刊スポーツの連載「野球の国から」(5月21日付)の中で私が独自の視点で五輪代表を選んだ際、山本をセットアッパーに推したのは、まさにこの能力があるから。唯一、怖いのは抜けたフォークで、相手が真っすぐのタイミングでも甘く入れば長打の危険性がある。

今の山本を左打者が攻略するのは、非常に難しいだろう。左打者の外角のコントロールが素晴らしく、カットボールで懐を攻め、フォーク、目線をずらすカーブも有効。試合前の時点で対右の被打率2割7分7厘に対し、対左は1割8分8厘だったが、この日も4安打中、左打者は高橋周の1本だった。

大野雄は修正能力の高さが際立った。1、2回は特に球が高かったが、イニングを重ねるごとに修正。試合の中でできるのが勝てる投手で、このクラスは自分の感覚でリリースの高さや体の使い方を調整でき、4回以降はいつもの姿に戻った。五輪では第2先発で推した。ボールを低めで動かしながら、出し入れする投球は国際試合でも通用する。(日刊スポーツ評論家)

中日対オリックス 登板する中日先発の大野雄(撮影・森本幸一)
中日対オリックス 登板する中日先発の大野雄(撮影・森本幸一)