2位と3位の2連戦初戦はヤクルトの投打がかみ合い、先勝した。先発の奥川恭伸投手(20)が自己最多の103球を投げ、7回1失点の好投で7勝目をマーク。一方、巨人は高橋優貴投手(24)が4回3失点と踏ん張り切れなかった。日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏が2人のピッチングを分析した。

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ヤクルトは高卒2年目の奥川、巨人は大卒3年目の高橋が先発したが、2人の投球内容を比べると、その差は歴然としていた。経験不足の奥川がめりはりの利いたピッチングをしていたのに対し、高橋は行き当たりばったりのピッチング。キャリアの差が逆転したような投球内容だった。

奥川のピッチングは、何を意図して投げているかが手に取るように分かった。追い込んでからの変化球はほとんどが低めに制球され、打者の打ち気の薄いときは簡単に変化球でストライクを取りにくる。フォークでストライクを取る技術があるから可能なのだが、勝負どころをわきまえる“勝負勘”が卓越している。

しかもこの試合は真っすぐがシュート回転気味で、好調時のようにコースを狙って投げてくる感じはなかった。それほど調子が良く見えなかったが、ファウルでカウントが稼げればいいといった感じで腕を振って投げていた。尻上がりに良くなったのも、高卒2年目とは思えないような内容だった。

一方の高橋は打者と勝負するというより、自分と勝負しているようなピッチングだった。3回1死一、三塁。村上を相手にフルカウントから内角の真っすぐを要求され、少し甘く入ったがファウルで助けられた。1球、スライダーでファウルになった後、もう1度内角の真っすぐが要求されると、逆球の外角で空振り三振。結果は良かったが、投手なら「さっきより甘くならないように」と心掛けるはず。不利な勝負どころでは、思い切って投げるだけだった。

4回にサンタナに浴びた2ランも、カウント3-1からのスライダー。ストライクを取った球種がスライダーだっただけに、打者有利のカウントで投げるときは、もっと低めを心掛けるか、切れ重視を意識しなければいけない。大城の配球にも問題はあるが、これだけストライクを取るのに四苦八苦していれば、打者勝負というより、ストライクが取れる球を最優先させるのも仕方ないだろう。

ヤクルトは10連戦の初戦に奥川で快勝した。今後は今までのように間隔を空けて大事に確実に勝ちに行くのか、ラストスパートで少しでも登板間隔を詰めて優勝を狙いにいくのか、悩ましいところ。注目していきたい。(日刊スポーツ評論家)

巨人対ヤクルト 6回裏巨人の攻撃を抑え声を出す奥川(撮影・浅見桂子)
巨人対ヤクルト 6回裏巨人の攻撃を抑え声を出す奥川(撮影・浅見桂子)